※画像はイメージです/PIXTA

日本の中小企業経営者の高齢化が問題となっています。万一廃業となれば、これまで培ってきた貴重な技術や有形無形の資産を失うばかりか、その企業を頼りにしていた地元住民の生活にも影響を及ぼすことがあります。今回は、日本海に浮かぶ隠岐の島の医療現場を舞台に、人々の生活を支えていた調剤薬局が、M&Aによりギリギリのところで廃業を免れた例を紹介します。

「隠岐の島に勤務してもらうはずの薬剤師が…」

しかし、そう簡単に話は進みませんでした。

 

「隠岐の島に勤務してもらう予定だった薬剤師との話がまとまりませんでした」

 

買い手候補の調剤薬局チェーンの担当者から、M&A後に送りこむ人材が確保できなかったとの理由で、白紙に戻されてしまったのです。

 

業界内では「M&Aは縁のもの」といわれるのですが、トントン拍子に話が進むことは滅多にありません。また、売り手側も買い手側も多くの利害関係者が関わっているため、全員がハッピーという理想的な着地もまれだといえます。

 

現場はいつも、納得するまで話し合うといった泥臭い地道な交渉を行いつつ、お互いの落としどころを探っていきます。

 

休業リスク、薬剤師の不足、近隣ドクターの高齢化、老朽化した住居環境…。まさに日本が抱える地域の課題がそのまま凝縮・反映されたかのようなこの案件は「見送り」ばかりが続きました。

 

期待と落胆を繰り返すうち、2021年8月、当社の情報ネットワークの活用により、業務提携先から6社の候補先を紹介してもらうことができました。するとそのなかの1社、株式会社yakuromaの代表から「隠岐の島の調剤薬局を検討したい」との連絡があったのです。

フォロワー11万人・薬剤師インスタグラマー社長の登場

30代の若い社長は、フォロワー11万人を誇る薬剤師のインスタグラマーとして、積極的に情報発信を行いつつ、これからの薬局業界を背負って立とうという、強い気持ちを持った方でした。高齢化が進む島の医療を次世代に繋げ、若手の薬剤師に薬局業界の現状を発信していきたいとの思いを率直に語ってくれたのです。

 

約4ヵ月後、無事にM&Aは成立。隠岐の島の地域医療は維持されました。そして2021年12月6日、いよいよ島民の皆さんが待ちわびていた開局の日を迎えたのです。

 

若い社長の感覚と価値観が、我々が重く受け止めていた「解決困難な地域の課題」をあっさりと飛び越えた瞬間でした。

 

経営者の高齢化問題は、日本全国で発生しています。

 

日本経済の根底を支える価値ある企業が失われるのはもちろん、今回のケースのように、地域住民の生活の根幹を支えていた存在を喪失することは、ひとつの企業が失われただけに止まらない、大きな問題に発展することもあります。

 

そのような資源を失わないためにも、M&Aはますますその重要度を増していくといえるのです。

 

 

中野 太郎
株式会社経営承継支援 大阪事務所
シニアM&Aコンサルタント

 

友田 雄一郎
株式会社経営承継支援 大阪事務所
M&Aコンサルタント

 

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