在宅療養に移行する際、食事が十分に取れない状態の場合、病院の医師や医療スタッフから「胃ろう」または「経鼻胃管(けいびいかん)」による人工的な栄養補給の提案を受けることがあります。ただし、医療法人あい友会の理事長であり、現役の在宅医でもある野末睦氏は、経鼻胃管ではなく胃ろうを強くすすめるといいます。その理由について、詳しくみていきます。

経鼻胃管が抱える「先端の位置」の問題

経鼻胃管は、胃管を入れ替える時に鼻からチューブを入れていくのですが、その先端がちゃんと胃の中に到達したかどうか、それを確かめる必要があります。

 

かつては、チューブから空気を注入して、その音を確認すればいいことになっていましたが、この方法は現在否定されています。先端が気管に入ってしまっている場合でも、同じように音が聞こえることがわかってきたからです。

 

そのため、現在では経鼻胃管を再挿入した後、レントゲン撮影をして、先端の位置を確認することが推奨されています。在宅の場でレントゲン撮影ができるクリニックは少ないと考えられることから、とても心配です。

 

超音波検査で先端を確認する方法も開発されつつあるようですが、まだまだ一般的でありませんし、検証も不十分のようです。

 

そしてこの経鼻胃管の先端の位置問題は、再挿入の時だけではありません。鼻のところでチューブをしっかり固定してあっても、舌や喉の動きによって、チューブを巻き込むように引っ張り上げて、先端が次第に上に上がってきてしまい、喉まできてしまうことや、さらにはそれをさらに飲み込んで、気管の中に入っていってしまうことがあります。

 

そのような状況で栄養剤を注入すると、すぐに死に直結してしまうことになるのです。注入する前に口の中を観察して、チューブが口の中でトグロを巻いていないかどうかを確認している介護者は多いと思いますが、注入のたびに先端の位置確認をレントゲンで行えるはずもなく、また超音波検査も実際には無理でしょう。

 

また、常に鼻先にチューブがあるため、意識的にせよ、あるいは眠っている間に無意識的にせよ、チューブを自己抜去してしまうリスクが、胃ろうと比較して格段に増えます。その度に再挿入しなければいけないので、上述した先端の確認作業をしなければいけません。

 

なお、このような偶発的な自己抜去を防ぐために、患者さんの手に手袋のような、ミトンと言われるものを被せることもよく行われていましたが、このミトン着用は拘束の一種とみなされており、できるだけ避けるようにと指導されています。

 

このように、経鼻胃管は胃ろうと比べてかなり不快であり、時として、虐待しているのではないかと考えられることすらあります。

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