(※画像はイメージです/PIXTA)

ある末期がん患者は余命1か月もないという状態で、治療の継続はできなくなりました。主治医は緩和病棟のある病院への転院調整をはじめました。そこで、ようやく本当のことを知った患者がとった驚きの行動とは。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

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「病院死」がこんなにも当たり前になったわけ

■ 家族のかたちが変わったせい!?

 

多くの人が「最期まで家で過ごしたい」と願っているにもかかわらず、現在、75%ほどの方が病院で亡くなっています。けれども、ひと昔前までは、実は8割以上が在宅死でした。1976年を境に、自宅で亡くなる人と病院で亡くなる人の数が逆転しています。

 

自宅で最期を迎えられない人が増えてきた背景には、さまざまな理由がありますが、なかでも家族のかたちや関係が変化したことが大きいと言われます。

 

かつては「サザエさん」のような2世帯、3世帯の同居が当たり前でしたが、核家族化がはじまって、家族どうしの関係性も昔に比べると稀薄になってきたためでしょう。子育てもそうですが、誰かしら家にいるから見ていてもらえるという状況は、ほとんどなくなってしまいました。終末期を自宅で過ごすためには、やはりご家族の負担が増えるというイメージが強いため、患者さんご本人が「家で過ごしたい」という本音を言い出せない場合も少なくありません。

 

■ 「在宅死」という選択肢は誰にでもある

 

ご家族のほうも、どのくらいのサポートが必要になるのかはやってみなければわからないので、不安要素が多いなら病院のほうが安心だと考えがちです。

 

しかし実際は、在宅医療や在宅ケアを受けながらの自宅療養は、ひとり暮らしの方でも、最期の瞬間まで自宅で過ごせるのが本当のところです。おひとりさまでも自宅で最期を迎えることはできます。

 

穏やかな在宅死を望んでいる人はたくさんいるにもかかわらず、実際の数がなかなか増えないのは、実は「家に帰れるという選択肢を知らない」「イメージがわかない」という理由もあるのではないでしょうか?

 

最期の過ごし方は自分で選ぶことができます。そして、その選択を支えてくれるのが在宅医療であり在宅ケアです。

 

■病院で、すべて何とかなるわけじゃない

 

みなさんが病院に行くときの多くは「具合が悪いとき」だと思います。

 

具合が悪くて病院に行くと、診察をうけ、検査をうけ、診断が伝えられます。処方がでればその薬を飲みますし、場合によっては入院や手術を勧められることもあるでしょう。つまり、具合が悪くても、病院に行きさえすれば、あとは良くなるように何とかしてもらえる気がしますよね。

 

ですが、病院に行っても何とかしてもらえるわけではない「具合の悪い」状態が存在します。それが終末期の状態の変化です。動けなくなったり、食事がとれなくなったり、意識が落ちてくるなど、一見、具合が悪そうなので、つい病院に行けば何とかしてもらえる気がします。でも、残念ながら病院に行っても治療できるものでなく、何とかしてもらうのは難しい状況です。

 

このような、病院に行っても回復する状態でない場合、「自宅で最期を迎える」選択を含め、どう過ごしていくかを、ご本人やご家族の人生観や価値観で選択していくことが必要になります。

 

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「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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