写真提供:HAN環境・建築設計事務所

「日本の住宅性能は先進国では最低レベルだ」と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。欧州では、新築住宅で結露が起こると施工者が責任を問われるといいます。「結露は発生するもの」…と、当然のように思っていた住宅の不便は、実は性能に気をつければ解消されるものなのです。ここでは、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が、「性能にこだわった住まいづくり」に必要な知識を紹介・解説していきます。

20年以上前にできた「“次世代”省エネ基準」が今でも…

平成11年基準は、別名「次世代省エネ基準」と呼ばれています。平成11年に基準ができた際に、「次世代の基準」ということで、このような呼ばれ方をされるようになったのですが、こんな20年以上も昔にできた基準が、いまだに「次世代省エネ基準レベルの高断熱住宅!!」などと、住宅広告のコピーに使われています。

 

ほとんどの消費者はそんな事実は知りませんから、「きっと、すごく高性能な家なんだろう」と思ってしまうでしょうが、とんでもありません。他の国では違法になってしまうレベルで、極めて低い水準の性能なのです。

 

そして、もう一つ。ドイツをはじめ、日本以外の先進国では、新築する際には、省エネ基準への適合が義務化されています。それに対して、日本ではいまだに基準への適合が義務付けられていません。つまり、省エネ基準を下回る低性能な住宅が今でも、違法でもなんでもなく、ごく当たり前に新築されているのです。

 

実は我が国でも、以前は「2020年までに省エネ基準への適合を義務化する」と閣議決定までされていました。建築物省エネ法という新法もできて、建物の用途や規模によって、段階的に義務化されていくことになっていました。実際、オフィスビル等の非住宅建築物は、順次、義務対象が拡大されています。

 

ところが住宅については、なぜか義務化は見送られています。省エネ基準へ対応できない住宅事業者が多く、業界が混乱しかねないというのがその理由だったようです。他国よりもはるかに緩い基準に対応できない住宅事業者が多い国、というのが日本の実情なのです。

 

ただ最近になって、住宅の省エネ性能の向上に向けた動きが活発になってきており、各種制度が今後変更されていくことが決まりつつあります。

 

◇「断熱」と「気密性能」とは?

 

日本は地震国なので、建築基準法レベルの耐震性能では十分とはいえないまでも、まあまあ優れていると思います。

 

決定的に劣っているのは、断熱性能と気密性能への取り組みです。

 

断熱・気密性能の重要性について詳しくご説明する前に、この2つの基本概念を説明しておきます。断熱というのは、冬の服装で例えると、セーターにあたります。どんなに分厚いセーターであっても、真冬にセーター1枚で外出すると寒いですよね。当然風を防ぐウインドブレーカーが必要になります。

 

(写真はイメージです)
(写真はイメージです)

 

住宅もこれは同じです。断熱材をどんなに入れても、隙間だらけですきま風が入ってくる家では、冬は寒く夏は暑い不快な家になります。日本の住宅は、断熱性能もまだまだ不足しているのですが、それ以上にすきま風のない家、つまり気密性能の確保への取り組みが極端に遅れているのです。

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