3. 中国経済の見通し
1|メインシナリオ
21年の経済成長率は実質で前年比8.0%増、22年は同5.3%増、23年は同5.4%増と予想している(図表15)。これからの経済政策は、コロナ対策で肥大化した財政赤字を縮小して持続可能性を高め、コロナ対策で緩んだ金融規律を引き締めて債務圧縮(デレバレッジ)を進めることになるため、経済成長率は巡行速度(=大規模な政策支援なしで無理なく成長できる水準、筆者は5%前後と想定)に回帰していくと見ている。
需要別に見ると、個人消費は低位で一進一退と冴えない動きだが、消費を取り巻く環境は前述のとおり改善してきており、北京冬季五輪が終わる来春には“ゼロコロナ”政策で溜まったペントアップ需要が一気に顕在化し“リベンジ消費”が本格化すると見ている。投資はここもと前年割れで底が見えない状況にあり、不動産開発投資は底割れする恐れもあるが、前述した「両新一重」などインフラ投資が底打ちし、製造業も消費向けの投資を増やすと見込むことから、投資全体では低位ながらも底堅い伸びと予想している。なお、輸出は中国に吹いていた追い風は弱まることからプラス寄与はゼロと想定している。
2|リスク要因
メインシナリオを崩す主なリスク要因としては、(1)新型コロナ(変異株)の海外からの流入と市中感染、(2)債務圧縮(デレバレッジ)に伴う住宅バブルの崩壊(不動産税の立法化がトリガーとなる恐れも)、(3)インフレによる経済成長の押し下げ、(4)共同富裕に伴う統制強化(自由経済の制限)などが挙げられる。
三尾 幸吉郎
ニッセイ基礎研究所
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