東大病院に勤める医師、中川恵一氏は「健康診断とがん検診だけは受けてほしい」と語ります。一方で、「見つけないほうがよいがん」も存在するとのこと。同氏がそれぞれの理由について解説していきます。 ※本連載は、書籍『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

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「検診を推奨するがん」「見つけないほうがよいがん」

市区町村で行われている住民検診には、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診があります。このうち、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診は死亡リスクを下げることが国際的な統計によって証明されています。また肺がんと胃がんも有効性があるとして推奨されています。この「5つのがん検診」に関しては、私は受けなければ損だと常々言っています。

 

市区町村のがん検診は低額で受けられます。自治体によって金額は異なりますが、無料か500〜1000円くらいの自己負担で済みます。

 

また、がん検診で見つかったがんのほうが生存率は高くなります。検診で見つかった大腸がんの5年生存率は9割以上ですが、それ以外の理由で見つかった場合は6割程度まで下がります。同じように、胃がんの生存率はそれぞれ88%と53%、乳がんでは93%と84%、子宮頸がんが94%と71%となっています。

 

もちろん、それ以外のがんになる可能性もあります。膵臓がんのように死亡率が高く、かつ早期発見しにくいがんもあります。

 

しかし、がんは生存を脅かすリスクの1つですが、すべてのリスクをゼロにすることはできません。

 

少なくともこの5つのがんについては、生存率を上げることがわかっているのですから、寿命を延ばしたいと思う人は受けたほうがよいのです。

 

その一方で、早期発見しなくてよい、というよりも見つけないほうがよいがんが存在します。その1つが甲状腺がんです。微少ながんを含めると、高齢者のほとんどが甲状腺がんを持っていると言われています。

 

韓国では甲状腺がんの検診が広がり、20年間で発見数が15倍に増えました。にもかかわらず、死亡数は減っていません。もともと甲状腺がんで亡くなることは極めてまれだからです。

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養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

養老 孟司
中川 恵一

エクスナレッジ

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