東大病院に勤める医師、中川恵一氏は「健康診断とがん検診だけは受けてほしい」と語ります。一方で、「見つけないほうがよいがん」も存在するとのこと。同氏がそれぞれの理由について解説していきます。 ※本連載は、書籍『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

「見つけることによる不利益のほうが大きい」事実

その一方、受診者1000人中、30〜40人に治療による勃起障害や排尿障害が発生、2人が重篤な心血管障害を発生、1人が肺や下肢に重篤な血栓を発生しています。さらに1000人中0.3人が治療の合併症により死亡しています。

 

過剰な治療を避けるため、早期の前立腺がんに対しては「監視療法」が国際的な標準治療になっています。

 

具体的には、3〜6ヵ月ごとの直腸からの触診とPSA検査、および1〜3年ごとの前立腺生検を行い、悪化していなければ経過観察(監視)を続けます。最近は生検の代わりに、身体への負担が少ないMRI(磁気共鳴画像装置)で代用することもあります。

 

欧米での大規模な研究でも、監視療法による10年生存率は、手術や放射線治療と差がないことが明らかにされています。

 

甲状腺がんも前立腺がんも、見つけることによる不利益のほうが大きいので、私は見つけなくてよいがんと考えています。

 

 

中川 恵一

東京大学大学院 医学系研究科 特任教授

養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

養老 孟司
中川 恵一

エクスナレッジ

あの「あの病院嫌い」の養老先生が入院した!? 自身の大病、そして愛猫「まる」の死に直面した養老先生が、「医療」や「老い」「大切な存在の死」とどう向き合うかなど今の時代のニーズに合致しつつも普遍的かつ多様な書籍で…

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