所有者が承諾していない以上、立ち退いてもらえる
先ほど、太郎さんが親の老後の面倒を見ようとしていることはよいことだと述べましたが、それは、そのようなことができる環境が整っていればの話です。
だれと同居するかは夫婦にとって重要な問題ですから、太郎さんは、自分の親を呼び寄せるのであれば、妻であるゆり子さんの承諾を得るべきであったでしょう。とくに本件では、マンションはゆり子さんの所有物ですから、ゆり子さんの承諾がなければ、いくら両親の老後の面倒を見ようとすることがよいことであったとしても、許されません。
そこで、本件では、ゆり子さんの承諾を取らなかった太郎さんに問題があるのであって、「夫の親を追い出すのは、人として問題がある」とする選択肢③も誤りです。
したがって、本件では、「マンションの所有者は、ゆり子さんなので、ゆり子さんが承諾していない以上、太郎さんの両親に立ち退いてもらうことができる」とする選択肢④が正解となります。
本件では、ゆり子さんが太郎さんの両親が引っ越してきたところで、問題にしているので立ち退いてもらえそうです。
時間が経過すると「同居を承諾」と判断される場合も…
しかし、同居してしばらくしてしまうと、裁判となったときに裁判所に同居を承諾してしたと判断されてしまう可能性があります。
老後は同居して面倒を見ることを承諾したとみなされてしまうと、太郎さんの両親が亡くなるまで同居することを承諾したこととなってしまいますから、立ち退いてもらうことはほぼ不可能となってしまうところでした。
無償で住まわせる場合、承諾したとみなされてしまうと、思わぬ不利益を被る可能性があります。ご注意ください。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
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