(※写真はイメージです/PIXTA)

経済の教科書にある「景気動向を左右する要因」の説明は、少々古くなってきました。景気動向に影響を及ぼす要因は複数あり、過ぎ去ってみないとその正体が判明しないケースも多くあります。日本の経済が「腰折れ」してしまった理由等とあわせながら、経済評論家の塚崎公義氏が景気の動きについて解説します。

景気回復の方法は「公共投資&減税」「金融緩和」

景気が悪いと失業者が増えてしまうので、政府日銀が財政金融政策で景気の回復を図ります。財政は公共投資と減税で需要を増やそうとし、日銀は金融緩和で景気を回復させようとするわけです。

 

景気が過熱してインフレが心配になると、今度は政府日銀が景気をわざと悪化させてインフレを防ごうとします。日本では過去何十年も経験したことのない事態ですが。

 

財政政策は景気を回復させるのは得意ですが、インフレ抑制はあまり得意ではありません。インフレが心配だから増税して景気を悪化させます、といったことは政治的に難しいでしょうし、タイミング的にも増税法案を国家で審議するのに時間がかかるからです。

 

一方で金融政策は、インフレ抑制は得意ですが、景気を回復させる効果はいまひとつです。景気が悪くて設備稼働率が低いときに「金利が下がったから設備投資をしよう」と考える経営者は稀だからです。

内需が弱く「腰折れ」してしまった国内景気

過去数十年にわたり、日本の景気が過熱してインフレが懸念されることがなかったのは、景気が回復している最中に海外の景気が悪化して輸出が減少して日本の景気が悪化してしまったからです。

 

リーマン・ショックのみならず、ITバブル崩壊等々によって輸出が減少し、それが国内の景気の腰を折ってしまったわけですね。

 

国内の景気が十分強ければ輸出が減っても景気が腰折れしないのでしょうが、バブル崩壊後の長期低迷期には日本の内需が弱く、景気の足取りがしっかりしていなかったので、簡単に腰折れしてしまった、ということなのでしょうね。

「バブルが景気回復を助ける」ケースはあまり聞かない

バブル期には景気が絶好調となる場合が多いですね。もっともそれは、かならずしも因果関係的にバブルが景気を回復させたということではないようです。景気が悪化している最中にバブルが発生して景気の方向を変えるといったケースは多くないでしょう。もしかすると、新型コロナ下の株高は、その稀な例かもしれませんが。

 

たとえば平成バブル時には、「日本経済は世界一」といったムードが広がり、それが景気を拡大させたと同時にバブルも拡大させた、ということだったわけです。ただ、バブルで株価が上がると投資で儲かった人が贅沢をするので一層景気がよくなる、といったことはあるでしょう。

 

一方で、バブルは突然崩壊します。そしてバブルの崩壊は人々のムードを暗くし、投資で損をした人の財布の紐を締め、金融機関の貸出態度を硬化させ、景気を悪化させるわけです。因果関係的にバブル崩壊が原因なわけですね。

 

バブルは滅多に起きないことだと思っている人も多いでしょうが、そうでもありません。日本で平成バブルが起きた約10年後に米国でITバブルが起き、その数年後に同じ米国で不動産バブル(リーマン・ショックの源)が起きたわけで、今後についてもバブルが起きる可能性は決して小さくないと考えておいたほうがいいでしょう。

 

現在の株価上昇がバブルか否かはわかりませんが、仮にバブルだったとすれば、その崩壊が景気を悪化させる可能性は否定できないでしょう。

 

バブル以外にも、景気の撹乱要因は多数あります。たとえば新型コロナによる消費減速は景気を後退させました。今後についても、たとえば大災害が景気の腰を折る可能性は否定できません。そうした可能性は景気予想屋にとっても予想不可能なので、あくまでも起きないことを祈っている、というだけですが。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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