過剰在庫の代表選手はお玉。すべての料理人が求めるお玉を用意したせいで、気づけば0.1㏄から2000㏄まで、取り扱いは1000種類以上に及ぶといいます。プロ料理屋人に広く知られ、海外からお客が訪れるようになった結果は。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

世界中のラーメン店から注文が入るお玉

計量は料理の基本中の基本。「料理」という漢字も「理を料はかる」と書くように、料理は計量を重視しています。

 

飯田屋の品揃えの中でも計量道具が多いのは、この料理の基本をとりわけ大切にしたいからです。特に、お玉を使わない料理人はいません。

 

「すべての料理人たちが求める最高のお玉を用意したい!」

「これでいいかではなく、これが欲しかったという感動をご提供したい!」

 

気がつけば「過剰在庫」と言われるほどの品揃えになってしまいました。

 

おかげさまで、その豊富さが料理人たちの間にクチコミで広がり、海外からもご来店いただけるようになりました。近年の世界的なラーメンブームもあって、アメリカ、中国、韓国、ドイツ、オーストラリア、イタリア、スペインなど世界中のラーメン店から注文が入ります。

 

お客様の求めるニーズは、驚くほどさまざまです。

 

ですから、これだけ集めたらご満足いただけるというゴールや終着点はありません。一人ひとりのお客様に感動をご提供するためには、どれほど商品を揃えても永遠に「過剰在庫」という言葉は存在しないのです。

 

もっと、もっと、いい道具があるのかもしれません。貪欲に探求することはこれまでも、そしてこれからも変わらぬ飯田屋の姿勢です。

 

お客様の求めるニーズは、驚くほどさまざまだという。
お客様の求めるニーズは、驚くほどさまざまだという。

 

■在庫回転率より在庫仰天率

 

効率的な経営を行うためには、在庫回転率は大切な指標かもしれません。在庫回転率が高いほどに、すぐに利益を得られて経営効率がアップするからです。

 

そのためには品揃えを売れ筋に絞り込み、大量仕入れによって仕入れ値を抑え、低価格で大量に販売します。広告を打ち、見やすくわかりやすい陳列によって売り込みます。大手量販店などでよく採用される経営手法です。

 

しかし、在庫回転率を重視した売場は、営業利益を追求する店側の都合でしかありません。そこで飯田屋では、在庫回転率を一切考えないことにしました。

 

だから、売れ筋を意識した大量仕入れをする必要がなくなり、その代わりに規格外なおもしろい商品を仕入れられます。仕入れられるアイテム数が圧倒的に増えるのです。

 

すると、あまり見たことのない商品がたくさん揃っている品揃えに、お客様はとても喜んでくださるようになりました。「こんなの見たことない!」「こんな商品があったんだ!」という喜びの声が売場から聞こえてくるのです。

 

数あるアイテムの中から、驚きと選ぶ楽しみを味わっていただきたいのです。じっくりと吟味して、本当に欲しかったものを見つける喜びを知ってもらいたいのです。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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