新社長に対する社員の目線は、ベテラン社員中心に「しょせん、修羅場を潜ったことのない二代目、お手並み拝見」といった冷たいものだった。※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

10年ビジョン…3年や5年とは「次元が違う」

■わくわくする将来像を描けるか

 

経営指針が、経営理念、10年ビジョン、経営方針、経営計画の4段階からなるが、まず経営理念について述べよう。一般的には「事業経営を行うにあたっての経営の価値判断の基準となる根本的な考え方を表明したもの」とされている。

 

同友会ではさらに踏み込んで「継続的・計画的に社会に役立つ事業を遂行する組織として、根本的な価値判断の基準を表明したもの」(『経営指針成文化と実践の手引き』より。以下同)としている。

 

次の10年ビジョンと経営方針とは、強い補完関係にある。従来、経営方針のみが先行して存在していたのだが、経営理念と経営方針との距離を埋めるものが必要ではないかとの論議が出て、10年ビジョンが生まれたという経緯がある。

 

同友会では「経営指針」における10年ビジョンを、「経営理念を追求していく過程における自社の理想的な未来像(ありたい姿)を具体的に書きあらわしたもの」としており、「経営理念に基づいて、『こうありたい』という姿、自分たちの将来のありたい姿を魅力的な目標像として構想し鮮明に描く事で、めざすべき長期の基本的な方向性や、やるべきことが自ずと明瞭になり、意欲は高まり組織は共同体として自律的に働き始める」と位置づけている。

 

なぜ期間が10年かということについては、10年は「単年度計画や中期計画で設定される3年から5年の期間と全く異なる次元の期間」であり、短期間だと陥りがちな「現状の積み上げをする発想」と異なる発想、別の言い方をすると夢のある、わくわくする将来像と発想が経営者にも社員にも求められるからだとする。

 

次の経営方針だが、同友会では「10年ビジョンの実現をめざして、中期(3?5年)のあるべき姿と目標を示し、それに到達するための道筋を示すもの」と位置づける。当然、前提として「10年ビジョンを実現するための課題」を明らかにし、そのうえで「時代の流れをつかみ、さらに自社の長所・短所を分析し、変化の中から自社の発展する道を見つけ出す」ことが重要になる。

 

ちなみに10年ビジョンを実現するための課題としては、「今後の事業展開」から「数値上の目標」に至るまでの4点から「中期(3~5年)のあるべき姿と目標」に定めるとしている。

 

最後の経営計画は、経営方針が「経営理念を具体化し、それを創造的に実現する道筋をまとめてきた」ものだとすると、「経営方針をさらに具体化するもので、経営目標を達成するための手段、方策、手順を示すもの」である。いずれにしても重要なことは、経営計画が「経営理念、10年ビジョン、経営方針と一貫性があること、また策定にあたっては、全社員の知恵と情報を集めて体系的に行うことが大切」だと規定されていることである。

 

同友会が最も大事にする「労使見解」には、「社員を最も信頼できるパートナーと考え、高い次元での団結をめざし、ともに育ちあう教育(共に育つ)を重視する」とあるから、最後の規定は至極当然である。

 

これだけのことを、同友会の「三つの目的」や「労使見解」といった基本理念とともに1年間近くみっちり学び、考え、意見を戦わせるのだから、セミナーに出席した経営者の多くは変化の萌芽を自らの中に胚胎しないわけにはいかない。セミナーをすでに修了した運営スタッフたちにとっても、参加者と真剣に対峙せざるを得ないから新たな気づきや発見を得るのは当然である。

 

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※初出:清丸惠三郎著『小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月11日刊)、肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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