(※写真はイメージです/PIXTA)

アパート経営を成功させるには、複雑に絡み合うさまざまな法律の理解が必要不可欠です。なかでも重要なのが「民法」。1896年に制定されて以来、約120年間大きな変更はありませんでした。しかし2020年4月1日に施行された「改正民法」の条文によって、不動産投資に関係する敷金返還義務や賃貸物件の原状回復について、ルールが明文化されることとなりました。今回は事例をもとに、改正民法の重要な変更点をみていきましょう。

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「退去時の修繕費用」は誰が負担するものなのか?

改正民法が不動産投資に与える影響は、大きく分けて4つあります。

●退去時における原状回復義務の明確化
●連帯保証人に対しての保証限度額設定や情報提供の義務化
●借主が家を修繕できる権利の追加
●貸借物の一部使用不能等を理由とする家賃減額

 

今回は、「退去時における原状回復義務の明確化」の事例を中心に解説していきます。

 

【事例】
2ヵ月後退去を控えた入居者の田中さん(仮名)から、部屋に置いていた冷蔵庫の重みで床がへこんでいると相談を受けました。入居時に「壊れたところや汚れについては費用を別途請求する」と伝えているので、退去時に床のへこみの修繕費用を請求したいと考えています。

 

民法改正前までは、こうした修繕費用について明確な規定が定められていませんでした。しかし、現在は以下のようになっています。

 

(民法第621条 貸借人の原状回復義務)

・部屋などに損傷が生じた場合は、返還時に入居者が原状回復の義務を負う
・しかし、通常使用で生じた物件の損耗や経年劣化については、入居者が原状回復する義務は負わない

 

これを、上述した事例に当てはめて考えてみましょう。今回の場合、床がへこんだ原因は田中さんの故意や過失によってではなく、通常の生活のなかで自然に生じたものなので、修繕費用を別途支払う必要がないということになります。たとえ、入居時に口約束があったとしても、オーナーは田中さんに修繕費用を請求できないのです。

 

通常損耗・経年劣化の扱いになるものは、以下の通りです。

 

・家具設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
・テレビや冷蔵庫などの電気ヤケによる後部壁面の黒ずみ
・地震で損壊したガラス など

 

これに反して、「引越し作業で生じたひっかき傷」「日常の不適切な手入れまたは用法違反による設備の毀損」「タバコのヤニ・臭い」「飼育ペットによる柱、壁等の傷や臭い」などの原状回復費用は、借主に請求することができます。

 

出典:アパート経営オンライン
[図表]通常損耗・経年劣化の扱いになるもの、ならないもの 出典:アパート経営オンライン

 

①以外のその他の項目について、重要な変更点を見ていきましょう。

 

次ページ「借主が家を修繕できる権利」が追加

本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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