(※写真はイメージです/PIXTA)

販売手数料の高さから、銀行などが積極的に勧誘している「外貨建て保険」。商品性が難解なこともあり、契約後トラブルに発展するケースも少なくありません。複雑な商品にもかかわらず、高齢者はなぜ外貨建て保険に手を出してしまうのか。朝日新聞経済部でかんぽ生命の不正販売問題も担当した柴田秀並氏が、保険勧誘の「禁じ手」を使ってまでセールスする銀行員と、「よく理解しないまま」契約してしまった高齢者との間に起きた事例を紹介します。※本記事は、柴田秀並著『生命保険の不都合な真実』から一部抜粋・再編集したものです。

「手書きメモ」を営業で使うことは「禁じ手」

「手書きメモ」は保険業法違反に問われることも

このケースのように、「手書きメモ」をあたかも募集資料のように営業現場で使うことは、本来「禁じ手」とされる。生保は一般的に、自社で審査・登録した資料以外を保険商品の募集に使うことを内規で禁じている。最悪の場合、保険業法違反となりうるからだ。

 

たとえば、日本生命では「お客様宛文章作成要領」という社内規定を定めている。そのなかで、「保険の提案内容をお客様に説明するため、拠点長または営業職員が独自に募集ツールを作成することも厳禁」としている。

 

営業で使われる募集文章は同社に設置された「募集時顧客説明文書審査会」において、厳正にチェックされるという。

 

生命保険協会が作成する保険募集人向けテキストにも、「(生命保険会社内で)審査・登録された募集資料を使うことが重要です。無登録の募集資料を使用してお客様の誤解を招いた場合は、保険業法違反等に問われることもあります」(括弧内筆者)と明記されている。

 

実際にはその場で、保険の仕組みなどを手書きで説明することも多いが、必ず回収している。女性行員が作成した手書きメモは、その丁寧な書き方から判断するかぎり、事前に入念に用意した文書だろう。

 

たとえ「よりわかりやすく」という「善意」による行動だったとしても、為替変動など、顧客にとって重要なリスクが一文字も書かれていない時点で、悪質といわざるを得ない。

 

放っておいたら…老後資金が目減り

契約直後の1年目から「生存給付金」として、伊藤さんの口座に豪ドルが振り込まれたが、円に替えずに放っておいた。

 

その1年後に2度目の給付金が振り込まれた。孫に贈与しようと考え、女性行員に告げると、「お孫様の豪ドル口座が必要です」と言われた。

 

このとき伊藤さんから連絡を受けた50代の長女は、「母はいったいどんな金融商品に手を出したのだろう」と不審に思い、詳細を調べた。そこで外貨建て保険に加入していたことが発覚。伊藤さんはそれまで、保険に入っていたという認識すらなかったという。

 

豪ドルで支払われた「生存給付金」を円換算するといくらになるか銀行に尋ねると、その時点で6%程度、為替差損が発生していたことがわかった。

 

生存給付金は決まった年に振り込まれる。

 

老後生活のために頼りにしていた資金が、目減りしかねない――。伊藤さんはそれから寝られない日々を送ることになる。

 

 

柴田 秀並

朝日新聞

記者

 

 

 

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柴田 秀並

光文社

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