(※写真はイメージです/PIXTA)

医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏は書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』のなかで、認知症の原因と対応方法を解説しています。

 

ギリシャにはいろいろな神がいますが、その中に「もの忘れの神様」がいます。日本には「もの覚えの神様」菅原道真公が北野神社や太宰府天満宮に祀られていますが、残念ながら「もの忘れの神様」を祀った神社は聞いたことがありません。

 

「ものを忘れること」は、精神の健康には良いのです。いつまでも失敗や憤慨の感情を引きずっているとあまり良くありません。ちなみに、これらの失敗や失恋があったこと、少し前に外出したことや昼食をとったという体験は覚えていることを「エピソード記憶」(episodic memory)と呼んでいます。ところが、これらがあったことを全く覚えていないのは、エピソード記憶の喪失といって認知症の特徴の1つです。

 

見たり、聞いたりした事柄は情報として脳の前帯状回や前頭前野、大脳辺縁系などで処理され、貯えられます。その貯まった記憶を呼び起こして、人は適切な行動や発言をします。この記憶のことを「ワーキングメモリー(作動記憶、作業記憶)」(working memory)と呼んでいます。その記憶を介して、料理をしたり、自転車に乗ったりするなど、道具を使う行為が可能になります。

支障が無ければ「もの忘れ」しても心配ないけれど…

エピソード記憶と作業記憶のいずれが失われても、医学的にも社会的にも「もの忘れ」といいます。ここまで読まれた方は、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れとどう違うのか分からなくなったと思われるかもしれません。そこで、別の説明を試みます。

 

歳をとると誰でも多少のもの忘れがおきます。人の名前が出てこない、つい約束を忘れるなどが例です。これらは記憶のごく一部分を忘れるもので、本人も後になって思い出したり、もの忘れを自覚したりしており、特に生活上も支障がなく、進行がないようなら心配はいりません。

 

一方、認知症のもの忘れは記憶全体が抜け落ちてしまうもので、本人は思い出せないし、もの忘れの自覚もなく、仕事や家庭生活にも支障が出てきますし、進行もみられます。さらに重要な点は、もの忘れ以外にも、今の時間や場所が分からない、物事を計画し、順序だてることが難しい、お金や薬の管理ができない、2つ以上のことが重なるとうまく処理できないといった様々な認知機能の障害を伴っていることです。

 

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梶川 博

医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長

 

広島県広島市出身。1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。1964聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設、現在会長。医学博士。

 

森 惟明

医学博士

 

大阪府立北野高校を経て、1961年京都大学医学部卒。大阪北野病院でインターン修了。1961年アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格。1967年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1968年日本脳神経外科学会認定医。1969年京都大学脳神経外科助手。1971年シカゴノースウエスタン大学脳神経外科レジデント。1975年京都大学脳神経外科講師。1979年京都大学脳神経外科助教授。1981年高知医科大学(現高知大学医学部)脳神経外科初代教授。1992〜1999年厚生省特定疾患難治性水頭症調査研究班班長。1992年第2回高知出版学術賞受賞。1996〜2000年高知県医師会理事。1999〜2001年国際小児神経外科学会倫理委員会委員長。2000〜2001年国際小児神経外科機関誌「Child’s Nervous System」編集委員。2000年高知大学名誉教授。著書多数。 

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法~改訂版』より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

梶川 博 森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。 国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を知ることで、ならない工夫、なってからの対応を身に付けましょう。 「三大疾患に負けないシリーズ」第1弾!

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