(※写真はイメージです/PIXTA)

両親を見送った50代独身女性の元に、ほとんど会ったこともない異母兄の訃報が届きました。独身の兄は、所有するマンションで孤独死したのです。女性は葬儀を行いますが、その後、マンションの固定資産税や管理費まで請求が届くように。ひとつひとつ対処しながら、女性はある決断をするに至ります。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

杓子定規な家庭裁判所に送付した「上申書」

相続の法定割合は、行方不明の異母兄が3分の2、佐藤さんが3分の1となりますが、現実には、今後の財産処分等の手続や供養関係もすべて佐藤さんが行わなければなりません。

 

そこで筆者は、いったん佐藤さんがすべての財産を相続し、行方不明者が現れたときにいくらか拠出することを約束する遺産分割協議書の作成を提案しました。佐藤さんも納得して、早速作成に取り掛かろうとしたのですが、家庭裁判所から「法定割合を分与する内容でないと認めない」という原則論に即した指導が入りました。

 

しかし、その場合は行方不明者のほうが財産を多く相続する内容となります。家庭裁判所の指導は原則が法定割合とはいえ、現状からすると、佐藤さんが全部を相続して、いままでの立て替え分や今後の費用等に充てる必要があります。

 

そこで、家庭裁判所にそれらの説明を記述した上申書を送付し、事情を説明したところ、いったん佐藤さんが全財産を相続し、行方不明者が現れた場合は一定の金額を分与するという内容で審判が下りたのでした。

 

マンションは早く売却の目途をつけたほうがいいと判断したので、家庭裁判所の審判が出てすぐ、売却手続きに着手しました。築年数が古くエレベーターもありませんでしたが、幸い人気エリアのそばだったため、購入してくれる不動産会社が見つかりました。

異母兄も、その生母も供養すると…

佐藤さんは、亡き両親の供養はもちろん、今回亡くなった異母兄と、弔う人のない先妻(異母兄の実母)の供養も、あわせて引き受けていくといいました。

 

覚悟を決めた佐藤さんに、筆者も本当に頭が下がる思いでした。今回の相続手続きがスムーズに進んだのも、そんな佐藤さんの人柄があったからではないでしょうか。今後の佐藤さんの人生が穏やかなものとなることを願ってやみません。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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