「『今日が一番若い』のは、卵巣も同じこと」と語る山下真理子氏

いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」ともいわれる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。女子校で特別講義をしたときに出会った「子どもはいらない、結婚もしなくていい」という女生徒たちに、あえて伝えたことを原稿にしたためてもらった。

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とある女子校で特別講義を

先日、大阪市内にある、とある女子高の特別講義をさせていただく機会があった。テーマは「女性の身体」について。指導要領に沿った必須の授業ではなく、いわゆる「選択授業」で、興味を持ってくれた高校1年生〜2年生の生徒が授業に出席する、というものだ。

 

「身体のことであれば、内容は自由に決めてください」と伝えていただいたときに、もちろん、女子高生の興味のありそうな(?)美肌についてやダイエットについてを話すことも考えた。けれども、私が選んだテーマは「女性が一生向き合わないといけない女性の身体について」

 

「女性らしさ」「男性らしさ」は、時代とともに変化する。ハイヒールは、元々は男性が履いていた歴史があるし、口紅は、江戸時代には「お歯黒」だった。短髪の女性は、女性として認められない時代があったし、時代が変わればジェンダーの価値観が変わる。

 

今や、「子どもを持つこと」が女性らしさの象徴ではなくなったし、子どもを持たない夫婦のあり方を良しとする人も多い。子どもを持つことが、女性の人生の全てではなくなったし「妻の役目」でもなくなった。

「子どもはいらない、結婚しなくてもいい」

15歳の女子生徒たちに、将来の夢を聞くと、「子どもはいらない、結婚もしてもしなくてもいい、それより自由に人生を送りたい。」と答える子がとても多かった。

 

一方、「自分の体を大事にしたいと思ったことはあるか」という質問には、ほとんどの生徒が「ノー」だった。 

 

私は、30代になって、不妊治療を始めた。20代までの私は、「子どもはいなくてもいい」「やりたいことをやり切って、子どもは“一番最後”でいい」「産みたいと思ったら40代でも産める」そう思っていた。ダイエットや美容の話題は大好物だったけれど、30を超えた先の自分の「身体」のことについて、真面目に考えたことはあまりなかった。

増やすことはできない残存卵胞数

タイミング法を試してうまくいかなかった私は、不妊治療専門のクリニックで検査を受けて、結果、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値が非常に低い、すなわち、残存卵胞数が少なく、妊娠可能期が人よりも短い可能性があること、そして、自然妊娠は難しいことが発覚した。

 

「(残存卵胞数を増やすには)何をしたらいいですか?」

 

担当医にそう尋ねたことを覚えている。同じ医師であるが故、その答えは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。

 

残存卵胞数は増やすことはできない。胎生20週頃に、女性の身体は原始卵胞数が700万個と最大を迎え、以降は新たに作られることはなく、減っていく。生まれた瞬間には200万個にまで減少し、思春期を迎えて初潮が来る頃には、20万個程度に減少していると言われる。

 

つまり、「今日が一番若い」のは、卵巣も同じこと。

 

30代の私は、「もし10代の頃から、自分の身体ともっと向き合っていたら」と、何度も考えた。

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