※画像はイメージです/PIXTA

相続税の申告は、申告書の提出・納付が終わっても完了ではありません。なぜなら、相続税は申告書提出後に税務調査をする割合が非常に高い税目だからです。しかい相続税の申告でも、調査対象になりやすい申告書と、調査を受けにくい申告書があります。その違いについてみていきましょう。

国税庁は相続税の重点調査対象者を指定している

国税組織を統括している国税庁は、相続税の重点調査対象として3点掲げています。

相続税の無申告は税務署にとって狙いやすい調査対象者

重点調査対象の中で無申告調査は、税務署がもっとも重点的に調査を行う項目です。

 

なぜなら、相続財産のすべてが申告漏れなので、調査による増差額(調査によって納める財産の金額)が大きいからです。

 

各税務署は、常に他の税務署と調査成績を比較されており、成績を評価する指標の1つがこの増差額です。そのため、無申告の調査は積極的に行われ、平成29事務年度では1,216件(全体の9.6%)が無申告の実地調査として行われています。

国外財産を保有しているだけで調査対象になりやすい理由

社会のグローバル化や、租税回避目的による国外資産の保有率は、年々増加しています。

 

国税組織は、法律改正や国外財産の税務調査をすることで対抗している状況が続いています。税務署が国外財産の情報を得る手段としては、法定調書があります。

 

金融機関は100万円を超えるお金を海外に送受金する場合、税務署に法定調書を提出する義務があります。法定調書には、住所・氏名、送金先の海外の銀行口座も明記されていますので、税務署はその情報を元に調査をします。

実は税務署はあまり富裕層を調査しない

税務署が相続税の調査を行うのは、一般家庭が多く、いわゆる富裕層の調査はあまり行いません。なぜなら、富裕層の調査を行うのは国税局だからです。

 

富裕層は全国に財産を保有していることが多く、税務署では対処しきれません。一方、国税局は、税務調査だけに専念できるので、時間を掛けて相続税の調査を行います。

税務署から相続税調査を受けやすい申告書

国税組織が掲げている重点調査対象者でなくても、相続税の調査を受けやすいケースがあります。なお、相続税の税理士関与割合は8割を超えているので、税理士に依頼しただけで税務調査が来なくなることはありません。

相続人だけで申告書を作成すると調査の確率が上がる

相続税の申告書は、税理士に依頼せずに作成することもできます。しかし、税理士が作成した申告書と比較すると、専門知識がない分だけ、計算誤りや特例適用誤りが多いです。

 

税務署の立場で考えると、申告ミスがありそうな申告書ほど入念にチェックをして、相続税の過少申告を把握しようとします。そのため、税務署から申告誤りの指摘を受けるケースが多く、結果的に余計な税金を支払うことになります。

提出書類の不備は税務署が調査をする口実になる

相続税の申告書に添付する書類には、法定添付書類と任意の添付書類の2種類があります。法定添付書類とは、法律で定められた提出義務のある書類をいい、戸籍謄本や遺産分割協議書の写しなどが該当します。

 

一方、任意の添付書類とは、申告書作成に際して使用した書類などをいい、申告書に添付する義務はありません。

 

そのため、法定添付書類だけを添付すれば、法律上問題はありませんが、税務署は申告書だけでは内容の適否を判断できないので、税務調査により申告書の作成元となった書類を確認します。税務署が確認したい情報は、相続財産によって異なります。

 

ですので、相続税を専門にしている税理士以外では添付する書類の判断が難しいのです。

税務署にカモにされている税理士には要注意

残念ながら、税理士の中でも、税務署にカモにされている税理士が存在します。

 

相続税専門の税理士の場合、相続人から相続財産の聞き取りを行って、申告漏れの相続財産がないか確認します。

 

しかし、相続税の申告書作成に不慣れな税理士は、相続人から提示された資料のみで申告書を作成するので、税務署から相続財産の申告漏れを指摘されやすいです。

 

また、単純な申告漏れや計算誤りは、税務署の調査件数稼ぎに利用されますので、税理士に依頼したからといって安心はできません。

相続税の調査確率を1%に下げる方法

税務調査を受ける確率を1%まで下げるには、「書面添付制度」を利用して相続税の申告書を提出することです。書面添付制度とは、税理士が税務署の代わりに相続人から聞き取りをして、その聞き取り結果を申告書に添付して提出する制度です。

 

書面添付制度は、国税組織(税務署)が推奨している制度なので、書面添付制度を活用した申告書が調査を受ける確率は、制度を利用しない申告書と比較すると確実に減少します。

 

つまり、相続税の税務調査の確率を下げる方法としては、「書面添付制度を利用すること」かつ「相続税専門の税理士に相続税申告書を作成してもらうこと」、この2点と言えるでしょう。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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