(※写真はイメージです/PIXTA)

金融庁は経営体力が万全ではない地方銀行間の再編をコロナ前から進めてきました。世界的な金融緩和のなかで銀行経営に苦しむ地銀再編はどのように進むのでしょうか。国際投資アナリストが解説します。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

金融庁は「上から目線」から「対話重視」へ

そして金融庁の遠藤長官は2020年7月14日で2年の任期終了で退任、同年7月20日から新たに氷見野長官が就任されました。しかし銀行再編について多くは記事等に書かれていなかったことから、地銀再編に関しては、氷見野新長官も遠藤前長官の姿勢を踏襲といった形かと思います。

 

所謂『金融機関に対する「上から目線」の姿勢を見直し、本音を引き出そうと対話重視』という金融庁自身の態度変更に加えて、地銀自体も収支改善にも取り組んではいるようであります。

 

たとえば、山梨中央銀行は2020年6月から導入した「硬貨整理手数料」や大分銀行は同年4月取り扱い分から、繰り上げ返済や有価証券担保取り扱い、抵当権抹消書類再発行への事務手数料など、多様な事務手数料の徴収を始めたり、銀行としては経費となる預金や定期金利を最低水準まで低下させ、銀行の収入改善を試みてはいるようです。一方で、これらの実施策が必ずしも、お客様(銀行サービスを活用される方)にとってベストではないようにも感じます。

 

従来の厳しい銀行経営に加えて、コロナ禍で政府や自治体から多くの給付金支給があったことや、『個人や法人が防衛的に預金しておく動きが加速し、銀行経営上の重荷だった預金が急増する懸念が浮上していた。…時間差はあっても各行の対応が横並びなのは、他行より高い金利を示したままでは少しでも有利な預け先を求める個人や企業のお金が流れ込んでくる事情もある。今年6月にマイナス金利が適用された地銀の預金額は前月の2倍強となる計5280億円。地銀の幹部は「(金利下げを)ためらえば大口の預金が入ってくる」という。融資や有価証券の運用先が乏しいなかで行き場を失い、銀行に積み上がる預金の負担は重くなるばかりだ。』

 

地銀にとって不都合な現実は、日銀などの中央銀行からの量的緩和は危機対応として、コロナショックのような経済危機の底を浅くしたり、信用悪化の連鎖を回避などの役割はあったものの、その後の処理は銀行にしわ寄せが行き、今や融資や投資先もなくなり、銀行には預金がたまるという、「本当にお腹いっぱい」であるわけです。

 

地銀再編については、2020年8月に辞任を発表された安倍前総理の後任首相である菅新首相(当時官房長官)が、足元は必要不可欠なインフラだが、将来的には再編が必要、のようなコメントをされた、とのことです。この話は、前述の通り、マクロでは地方人口減、金利低下で貸出需要の減少、またミクロではATMや店舗、人件費などコスト高の地銀を今後も支えていくことはできないので、日本の金融システムを壊さない程度に上手く再編をお願いします、ということかと感じます。

 

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最強の外資系資産運用術

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