(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月9日に公開したレポートを転載したものです。

3. 首都圏新築マンションのエリア別の動向には違いが生じてきている

(1)発売戸数の動向

 

首都圏の新築マンションについては全体的に回復基調にあるが、エリア別の動向には違いが生じている。長谷工総合研究所によると、エリア別の2021年上半期の首都圏新築マンションの発売戸数は、「東京23区」が5,816戸(前年同期比+51.3%、2019年同期比+6.4%)、「神奈川県横浜市・川崎市」が2,339戸(+107.2%、+17.5%)、「千葉県その他」が1,193戸(+73.1%、+53.5%)とコロナ禍前を上回った。

 

一方で、「東京都下(23区以外)」は963戸(前年同期比+26.5%、2019年比▲24.8%)、「神奈川県その他」は1,227戸(+188.7%、▲8.2%)、「埼玉県さいたま市」は465戸(+194.3%、▲45.0%)、「埼玉県その他」は838戸(+146.5%、▲25.8%)、「千葉県千葉市」は436戸(+207.0%、▲28.6%)と、供給量がコロナ禍前より少ないエリアが多い[図表3]。

 

[図表3]2021年1-6月の発売戸数(エリア別、2019年比、前年比)
[図表3]2021年1-6月の発売戸数(エリア別、2019年比、前年比)

 

「東京23区」、「横浜市・川崎市」の発売戸数が首都圏全体に占める割合(2021年上期)は61%であり、首都圏全体の回復をけん引した。また、「千葉県その他」は、比較的価格水準の低いエリアの中で選好され、需要を引き付けたと見られる。一方、2019年の水準を回復していないエリアでは、コロナ禍に関係なく、元々2019年末から減速傾向が強かったと思われる。

 

(2)価格動向

 

平均発売価格は、「埼玉県さいたま市」(5,512万円、前年同期比+12.5%、2019年同期比+5.9%)、「神奈川県その他」(4,994万円、+6.3%、+4.7%)の2エリアでは前年同期比、2019年同期比とも上昇、「東京23区」(8,041万円、前年比▲1.8%、2019年同期比+5.2%)、「千葉県その他」(4,637万円▲0.6%、+12.5%)の2エリアでは前年比で減少、2019年比では上昇となった。一方、「東京都下(23区以外)」(5,338万円、▲1.1%、▲4.4%)、「千葉県千葉市」(4,255万円万円、▲5.8%、▲14.0%)の2エリアでは前年同期比、2019年同期比とも下落した[図表4]。

 

[図表4]2021年1-6月の平均発売価格(エリア別、2019年比、前年比)
[図表4]2021年1-6月の平均発売価格(エリア別、2019年比、前年比)

 

「埼玉県さいたま市」は供給量が少なかったために価格が高まったという側面があるものの、「神奈川県その他」とともに価格上昇幅がかなり大きく、供給面からの一時的な価格上昇ではなくエリア全体の価格水準が上方修正されている可能性が高い。また、「東京23区」と「千葉県その他」はコロナ禍によるスペース拡大等の需要増を受けて物件取得競争による価格上昇があったとみられるが、2021年半ばでは落ち着いている模様だ。「東京23区」では既にかなり高水準の価格となっており、そのエリアで購入希望ではあるものの、収入面で購入できなくなり、需要が低迷してきている可能性がある。このような要因で価格と発売戸数が伸び悩むエリアでは、今後しばらく価格が停滞する可能性がある。

次ページ4. なぜエリアによって差が生じたのか

本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

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