(※写真はイメージです/PIXTA)

もはや宇宙はロマンを語る場所ではなく、ビジネスの最後のフロンティアに様変わりしています。宇宙ビジネスは、農業生産や海運のナビケーションだけにとどまらず、無限に発展していく可能性のある身近なビジネスに変貌しています。日本人は宇宙ビジネスにどう向き合っていけばいいのでしょうか。※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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    20年後には100兆円以上の市場に拡大

    人工衛星から地表の様子が見えると、どのようなビジネスに活用できるのか、2つの例を挙げてみます。まず1つめは、農業や農作物への投資です。

     

    たとえば、大豆の生育状況を地上や飛行機から見るよりも、広い範囲で見ることができます。どの地域でどのくらい育っているかが分かると、気象の情報と合わせて、その年の大豆の価格や仕入れ量、どこにどれだけ運搬するかなどといった貿易や商売に役立つ情報となるのです。もちろん、農作物の作り手側も、土壌の状態や天候も含めた情報を活用した精密農業が可能になります。

     

    2つめの例は、航路の安全です。

     

    現在、デジタルの力で世界中の通信には、ほとんどタイムラグがなくなりました。人の移動も航空機が活用されています。その一方で貿易など大量の物資を運ぶためには、やはり船での輸送が欠かせません。

     

    近年、海運で注目されているのが北極海航路です。1年のほとんどを氷に閉ざされてきた北極海も、夏場には氷が解けるようになったからです。極地の氷が解けることは、地球温暖化など環境の観点からネガティブなイメージで言われることが多いのですが、ビジネス環境に大きく影響する利点もあります。

     

    太平洋に面した日本からヨーロッパ方面に向かう船の航路は、非常に長い距離を長期間かけて移動します。日欧の主要な港間の距離は、現在の主要航路をみるとインド洋を経由しスエズ運河を通る航路は約2万キロメートル、南アフリカの南端の喜望峰を経由する航路は実に約2万5000キロメートルです。北極海航路を使うことができれば、これが1万2000~1万3000キロメートルに縮まります。

     

    北極海航路の商船通航には砕氷船支援や耐氷船の燃費向上などの課題はありますが、人工衛星からどこの氷が解けているかを知ることができれば、船の安全な運航に役立つ情報が得られます。実際に株式会社ウェザーニューズが、2011年から北極海を航行する船舶の安全運航を支援する『Polar Routeing』サービスを提供しており、その支援を受けながら北極海航路の安全な運航が行われています。

     

    これらの2つの例は、宇宙ビジネスのほんの一部です。このように宇宙から地球を見るだけでも、色々なビジネスの可能性が考えられるのです。

     

    もっと趣味的に宇宙ビジネスを使っていいのだったら、筆者は『機動戦士ガンダム』のスペースコロニー型の小型衛星を作って、ガンダムのプラモデルを載せて飛ばすことを思いつきました。スペース・デブリの問題が解決されたら、そういう趣味的なものもビジネスとして成り立つかも知れません。実際、前述のインターステラテクノロジズ株式会社が2021年7月にTENGA(テンガ)を飛ばしたのも面白アイディアのひとつです。

     

    アメリカのワシントンにあるSIA(Satellite Industry Association、衛星産業協会)は、宇宙ビジネスの市場規模を測定してレポートを発表しています。

     

    2021年のレポートのエグゼグティブサマリーによれば、世界全体の宇宙ビジネスの市場規模は、日本円にしておよそ40兆円です。この10年間で倍近い成長を遂げていて、このまま続けば20年後には100兆円市場を越えるまでに成長すると言われています。2021年度の日本政府の当初予算は106兆円規模ですから、いかに大きな市場かが分かると思います。アメリカやイスラエルなど、多くの国が商用の宇宙ビジネスに積極的に参加するようになり、今後も市場は大きくなっていくと見られています。

     

    次ページ日本の宇宙ビジネスが拡大しない理由は
    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    渡瀬 裕哉

    ワニブックス

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