(※写真はイメージです/PIXTA)

世界経済はいま「自由貿易の時代」へとシフトしています。経済学者たちはこの流れを歓迎・あるいは必然として受け止めていますが、一部の政治家には従来型のしくみの維持を重視する人もいて、しばしば議論が展開されています。しかし、目立ちやすい部分的な損失を懸念するより、全体が利益を享受できる方向へシフトするほうが、経済発展の近道だといえます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

「自由貿易協定」と「新入生の友達作り」は似ている

それでも、世の中の動きは自由貿易の方向に緩やかながら進みつつあります。それは、「先に友達を作ったほうが有利だから」ということなのかもしれません。

 

農業国AとB、工業国CとDがあるとします。AとCとDが自由貿易協定を結ぶと、CとDはAからの農産物輸入の関税を撤廃しますから、CとDの消費者は「農産物を買うならBではなくAから」と考えるようになります。

 

そうなると、Bにとっては悲劇です。国内の工業は高い関税で守られたままですから、国民は高い工業製品を買わされ続けるわけですが、一方で比較優位のある農業が輸出不可能となって壊滅的な打撃を受けかねないからです。

 

そうなってから「自分も自由貿易協定に加わりたい」と言っても、容易ではないでしょうね。A国が猛烈に反対するでしょうから。

 

これは、新入生が友達グループを作るのと似ているのかもしれません。最初に友達グループを作った人々は、ときに嫌なこともあるでしょうが、総じて楽しく遊べるでしょう。一方で、最初の時点で友達グループに参加しなかった人は、だれも遊んでくれないかもしれません。

 

あとから友達グループに入れてもらうのは大変です。だれかが反対したら入れてもらえませんし、入れてもらったとしても、不利な条件を押し付けられるかもしれません。「入れてやるから、俺たちが行きたい場所につきあえ。お前の行きたい場所の希望は聞かないぞ!」といった具合です。

 

それが嫌だから、早い段階で「ときに嫌なこともあるだろうが、友達グループの結成メンバーになろう」と考える人が多いのでしょうね。

高齢の零細農家を引退させ、大規模農園に転換すれば…

これまでは「農家が失業するといけないから、農産物の輸入はできない」といわれて、非農家は高い国産農産物を買わされていたわけです。しかし、農家の高齢化が進み「農業が労働力不足なので外国人労働者を受け入れよう」という話になっているわけです。

 

それなら、外国人労働者を受け入れるのではなく、農産物を輸入すればいいのです。農家は無理をせず生産できる量だけ生産し、足りない分は輸入すればいいのです。そうすれば、非農家は安い外国産農産物を食べられますし、外国人労働者も異国の地で家族と離れて働く必要はなくなりますから。

 

高齢の農家に対しては、引退奨励金を支払って離農してもらうことも選択肢でしょう。そして、残った若い農家には、耕作放棄地等を集約して大規模な農業を営んでもらうのです。そのための法整備等々は、当然必要になるでしょうが。

 

高齢の零細農家が引退し、若い農家が大規模で効率的な農業を展開するなら、外国産農産物との価格差はいまよりはるかに小さくなるはずです。そうなれば、大幅に関税を引き下げることも可能かもしれません。今後の議論の展開に期待しましょう。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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