月16万円の負担…介護保険「支給限度額」巡るケアマネの功罪

相沢 光一
月16万円の負担…介護保険「支給限度額」巡るケアマネの功罪
(※画像はイメージです/PIXTA)

ケアマネは基本的に支給限度額を考えてケアプランを考えることはしません。必要最小限のサービスに抑えようとします。 ※本連載は相沢光一著『介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ』(河出書房新社)より一部を抜粋、再編集したものです。登場するケアマネの方々、サービス事業者の方々のお名前は、すべて仮名です。

なぜケアマネは優秀な営業マンなのか

■優秀な〝営業マン〟ではあるが…

 

ところが、そうした配慮もなく、支給限度いっぱいまでサービスを入れてしまうケアマネがいるというのです。

 

「居宅介護支援事業所には、社会福祉法人や民間の会社が運営しているところがありますが、そういうところに所属しているケアマネのなかには、支給限度額いっぱいまでサービスを入れる人がけっこういるんです。

 

特別養護老人ホームなどの高齢者施設の運営母体は、たいていが社会福祉法人です。社会福祉法人は民間の組織ですが、社会福祉を目的とした公的な事業を行なうことから設立には厳しい審査をクリアしなければなりません。ところが、認可されれば国からさまざまな助成や補助、税制の優遇措置が受けられます。公益性の高い非営利法人という位置づけです。

 

とはいえ、法人を運営していくには事業で収益を上げなければなりません。多くの人にサービスを利用してもらい、介護報酬を得る経営努力をする必要があるわけです。非営利法人として健全経営をつづけていければいいという方向性が守られているところなら問題ないのですが、収益性を高め、事業を拡大していこうと考える経営トップもいて、高齢者施設だけでなく、デイサービス、ケアマネの事業所、ヘルパーの事業所など、さまざまな事業を手がけるようになる。福祉事業のグループ展開です。

 

そういうトップから見れば、所属するケアマネは営業マンのような存在です。ケアプランをつくる立場にあって、サービスを増やすことやその仕事をグループ内の事業者に振ることができるからです」

 

利用者はケアマネから「このサービスは必要です」といわれれば受け入れますし、同じグループのサービス事業者が来ることも、支給限度額いっぱいまでサービスを入れられていることにも気づきません。

 

誰からも文句をいわれず、利用者の支給限度額の介護報酬はその法人に入るわけです。まさに優秀な“営業マン”。上司からは高く評価され、待遇も良くなっていく。こうして、サービスを支給限度額いっぱいまで組むことがくり返されるのです。

 

田辺さんは、知り合いの訪問看護師からその事例を聞いたそうです。

 

「実家でお母さんを娘さんが介護しているケースです。娘さんは同居で仕事も辞めていたので介護に専念できる状況。家事はお手のものですし、身体介護もできます。

 

しかし、担当ケアマネは毎日のようにヘルパーを入れたそうです。サービスを増やせば利用者負担も大きくなりますが、お母さんの年金で賄っていたので、娘さんからの不満も出ない。また、ヘルパーが毎日入ってくれれば、やることも少なくなってラクですから、いまもその状態がつづいているそうです。でも、必要最小限のサービスでケアの効果を出そうと努力しているケアマネから見れば、釈然としないですよね」
 

 

相沢 光一
フリーライター

 

 

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