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連載「精神科医が語る」医療現場の現実【第9回】

「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】

精神科医精神疾患

「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年々増加傾向にある、精神疾患患者数。医療法人瑞枝会クリニック院長・精神科医の小椋哲氏は、自身もメンタルの問題による不登校、高校中退といった経験を経て29歳で医学部に入学しました。同氏が幼少期から大学入学を振り返りつつ、経験があるからこそわかる「精神医療に求められるもの」について解説していきます。

不登校となり、「児童精神科の名医」を訪ねたが…

40年ほど昔のことですから、不登校に対する周囲の理解や許容はほとんどありませんでした。私自身も思春期の子どもですから、自分の心の状態を他人にうまく説明することができません。

 

精神科医だった父親は、手に負えなくなり、福岡にある児童精神科に私を連れて行きました。その診察がどんなものだったのか、今となってはまったく記憶にありません。

 

ただ確かなことは、精神科医である父も、児童精神科の名医とされていた福岡の医師も、当時の私にとってなんの助けにもならなかったことです。実際にはしばらくして登校を再開しましたが、それは彼らの援助が奏功したのではなく、母親が私を心配するあまり円形脱毛症になってしまったのを見て、さすがにまずいと思ったからでした。

 

学校に行き始めてからも、定期テストを白紙で提出したり、突然脱兎のごとく教室から逃げ出すといった奇行を繰り返していました。担任もクラスメートも、この不思議な小椋少年にいったい何が起こっているのかまったく分からなかったでしょうし、おそらく頭がおかしいと思われていたでしょう。

 

それでも、勉強だけはできたので、高校は地元で一番の進学校を受験して、合格しました。自分で進路を決定すれば、レールに乗っていることにはならないだろうと一応の納得ができたからです。そのときは、京都大学に進学して数学者か哲学者になろうと考えていました。

 

高校に入学してからしばらくは登校しましたし、中学と同様に水泳部に入りました。しかし、進学校だっただけに周囲は品行方正で勉強熱心な生徒ばかりで、中学の頃から感じていた「レールに乗せられている」という感覚をいっそう強く覚えるようになってしまい、また登校しなくなり、結局、そのまま中退しました。

 

今、精神科医の立場から当時の小椋少年を観察すると、精神疾患の診断基準には該当しないと思われますが、ARMS(精神病発症危険状態)にあたり、統合失調症などの精神病に発展するリスクが高い精神状態であったと考えられます。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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