在宅医療を余儀なくされたとき、様々な感情が押し寄せるなかで、切っても切り離せないのは「お金」に関する悩みです。医療法人あい友会の野末睦理事長に、在宅医療をめぐる「お金まわり」の話を聞いていきます。

在宅医療の受診を制限したい「本当の理由」

訪問看護や訪問介護の介入を断る、あるいは回数を制限してほしいと言ってくる患者さんの多くが、実はお金のことを心配しています。

 

ただ、直接的に「費用の面で心配しているのですか」とご家族に尋ねると、患者さんへの手前であったり、見栄を張ったりする心理が働いてか、「そんなことはありません」と答える人も多いようです。

 

そこで今回は、次のように患者さん本人とご家族に尋ねてみました。

 

医師「〇〇さん、体が思うように動かなくて辛いですね。今までトイレになんとか歩いていけていたようですが、辛さは増していませんか。オムツを使っているようですが、そうすると、お尻を綺麗にしたりするのに、訪問看護に毎日来てもらったほうがいいのではないでしょうか。それに、医療用オピオイドの副作用として便秘が代表的ですが、排便コントロールも訪看さんがよくやってくれますよ。それと、ご存知だと思いますが、高額療養費制度というものがあって、〇〇さんの場合にも、おそらく限度額に引っかかるので、訪問看護に毎日来て貰っても、自己負担は増えないと思いますよ。限度額認定証、持っていますよね?」

 

このように、看護師の頻回の訪問を促しつつ、高額療養費制度のことを伝えると、ほとんどの人が、頻回の訪問を希望します。実際、今回も「ああ、そうなんですね。それなら是非来てもらいたいと思います。」と返事をもらいました。

 

このように、在宅医療、特にがんの末期状態での在宅医療には、それなりのお金がかかりますが、ほとんどの場合、高額療養費制度の負担限度額[図表1]を超えてくるので、それ以上の医療費の自己負担は無くなります。

 

[図表1]【70歳未満】高額医療費の自己負担限度額(出典:全国健康保険協会)
[図表1]【70歳未満】高額医療費の自己負担限度額(出典:全国健康保険協会)

 

負担限度額は、前年度の世帯収入及び過去12ヶ月以内に限度額を超えた支給が行われた回数で決まってきます。役所などで聞いてもらうといいと思います。

 

日本の保険制度は、この高額療養費制度があるために、高額の医療を受けている患者さんにとっては大変優れたものであると言えます。

 

それでは、がんの患者さんの場合ではなくて、脳卒中後の疾患などを患った患者さん場合には、自己負担額はどのくらいでしょうか。

 

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