(※画像はイメージです/PIXTA)

現在、新型コロナ感染拡大の影響で、在宅医療がスタンダードになりつつあります。麻酔科医から在宅医へと転身した矢野博文氏は書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』のなかで、「最期までわが家で過ごしたい」という患者の願いを叶えるために、医師や家族ができることは何か解説しています。

経口摂取は行わず、すべて胃瘻栄養となったHさん

七月には退院し再び自宅療養に移行したHさんは、経口摂取は行わず、すべて胃瘻栄養となりました。

 

その結果、身体の栄養状態はみるみる改善し、反応もよくなりました。声を出して笑う、時々は会話が成立する、テレビを観ながら出演者に文句を言うなど、今までには想像もできなかったような精神活動の改善が認められました。

 

退院してから一年後には体重が増加し、栄養剤注入を減量しました。しかし胃瘻造設から約二年後、Hさんの身体状態に陰りが見え始めました。娘さんが呼吸状態の異変に気づいたのです。

 

夜間に一〇秒程度の無呼吸が頻回に出現し始めました。また入眠中に咳込みが目立ち始め、時々発熱が認められるようになり、唾液を誤嚥している可能性が考えられました。

 

さらに反応性の低下、無呼吸に続く低酸素血症、血液検査上の心不全の悪化などが次々に起こりました。Uさんは、

 

「胃瘻を造ったとき、本当は終わっていたはずの命をこうやって延ばすことができてよかったです……」

 

と語りました。一方、娘さんは、

 

「今でも胃瘻を造ったことがよかったのかどうかわかりません……」

 

と話してくれました。家族の中でもいろいろと葛藤があったことが想像されました。しかし、二人ともそろって、

 

「今度は病院には行かず、家で最期まで看ます」

 

と言ってくれました。

 

私たちはHさんの下り坂の傾斜を何とか減らすべく、栄養剤の減量、抗菌薬や利尿薬の投与など、いくつかの抵抗を試みましたが、Hさんは次第に衰弱していき、娘さん夫婦に見守られながら静かに旅立ちました。

 

 

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矢野 博文

 

1957年7月徳島市生まれ。1982年川崎医科大学を卒業。以後病院で麻酔科医として勤務。2005年3月よりたんぽぽクリニックで在宅医療に取り組む。

 

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

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梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

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