(※写真はイメージです/PIXTA)

米中の対立が貿易や技術から金融市場にまで及んできました。アメリカが新規上場ルールの厳格化に乗り出す一方で、中国政府は海外上場の規制強化を打ち出してきました。米中対立は制御できるかわからないまま、危うさを増しています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

金融市場のルールは複雑で不公平に

問題はもちろんアント・グループの例に限らず、様々な米国のプライベートエクイティファンドといわれる投資ファンドは、高い市場成長率や投資リターン期待も含めて、多くの中国企業に投資してきており、実際に投資家(そして年金基金であれば、その後ろの年金受給者)も結果として恩恵を受けているわけです。

 

恩恵を受けているのは米国投資家のみならず、今後中国に本格的に進出しようとしている米金融機関にもみられます。直近の例ですと、運用残高世界1位の米ブラックロック社が、中国本土における100%出資の資産運用会社(基金管理有限公司)の設立認可を2020年8月21日に受け、上海市に設立することができるようになりました。

 

また運用総額は6兆1千億ドル(約640兆円)で、米ブラックロックに次ぐ世界2位の運用会社であるバンガード社は、アジア戦略の見直しとして日本と香港市場から撤退し、アリババ傘下のアントグループと合弁会社を作り、外資金融規制緩和と成長している中国本土へ進出、と発表しました。同社は、世界で初めてインデックスファンドを個人向けに販売し、低コストを武器に資産残高を伸ばしてきましたが、近年はアジア事業の見直しを進めており、2018年にはシンガポール市場から撤退しました。

 

バンガードは日本において、マネックスグループと組んでマーケティングを行っていましたが、今後新商品などは提供しない、ということで、同社のような欧米系外資金融の経営層から見た、成長が見込みにくい日本市場に今後も投資し続けるよりも、中国のような高成長が期待しやすい市場への投資、という姿勢が鮮明に見られた例、であるかと思います。

 

今後は米国を通じた様々な外交手段を通じて、中国企業の製品(ハードやソフト両面)が米国や友好国(もしくは中国と協力したがらない国)にて使用禁止や販売制限が受ける可能性があるとともに、金融面でも最終的に資金が中国企業に投資しているかどうか、という明確化がより求められるかと思います。

 

そして今まで恩恵を受けていたプライベートエクイティファンドも、米国年金基金の投資家などから、今後中国案件入りか否か、という目線でのファンド投資の要件が求められるかと思います。

 

一方でブラックロックなど米金融機関が中国市場から収益をたとえあげていても、そこは問題視されず米国市場で上場されている、という現状を見ると、何とも複雑、且つ公平でないといった環境はこれからも続くかと思います。

 

 

後藤 康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

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