(※写真はイメージです/PIXTA)

精神疾患患者は、年々増加傾向にあります。「集中力が続かない」ことなどを理由に自らに“発達障害”を疑う人も増えているようです。「病気」か否か、その境目はどこにあるのでしょうか。医療法人瑞枝会クリニック院長・精神科医の小椋哲氏が解説していきます。

「スティグマ」とは?5人に1人に当てはまる…

スティグマとは、もともとは奴隷や犯罪者の身体に刻印された「しるし」のことで、現代では、心身の障害や際立って目立つ個人の特徴、特定の人種・民族・宗教などの集団的特性など、望ましくないと見なされる特性に対する差別や偏見を意味する言葉として使われます。

 

特に精神障害者は、そのレッテルだけでその人のすべてが異常であるかのような偏見をもたれがちで、本人や家族も大きなショックを受けたり、劣等感につながったりすることもあるのです。

 

しかしすべての精神疾患は、特定の状況下での心身の反応が少数派であるだけなのです。精神疾患をもっているからといって、その人が頭からつま先まですべてが異常であるということにはなりません。

 

異常と正常という二元論ではなく、スペクトラムのなかの少数派であるという認識をもつことで、スティグマはかなり軽くなります。

 

そこで私は、PSM(Psychosomatic minority、サイコソマティック・マイノリティ)という呼び方を提唱しています。すべての精神疾患の患者は、PSMという少数派の人たちなのです。

 

これに似た考え方に、HSP(Highly Sensitive Person、ハイリー・センシティブ・パーソン)という概念があります。非常に感受性が強く、敏感な気質をもった人という意味で、1996年にアメリカの心理学者エイレン・N・アーロンが提唱しました。

 

視覚や聴覚に過剰に刺激を受けやすかったり、共感力が高過ぎて他者の苦しみや悲しみを自分のことのように感じて苦しんだり、あるいは添加物や着ている服の素材に反応したりと、敏感になる対象はさまざまあります。アーロンは全人口の5人に1人がなんらかのHSPだと述べています。

 

この概念が広まるにしたがって、私のクリニックでも「自分はHSPではないか」と質問してくる患者が増えています。

 

私自身は、HSPはPSMの一部だと考えています。精神疾患の診断基準を満たさないけれど、社会のなかで生きづらさを感じている典型的な一群であるというわけです。PSMのなかにはおそらくHSP以外にも、さまざまなタイプがあるだろうと考えられます。

次ページ「精神科なんて一生縁がないと思っていた人」ほど…

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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