(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年10月18日に公開したレポートを転載したものです。

【44エリアで出生数が約5割以上減少】

赤ちゃんが半世紀で約6割減となったのは11位から34位の24都府県である。47都道府県において、最も多い減少率は約6割減、という状況である。


 
そして約5割の減少、つまり半世紀前の約半分の出生数となったエリアは、35位から44位の10エリアとなった。



この10エリア中、関東エリア(神奈川県、埼玉県、千葉県)と九州エリア(佐賀県、熊本県、鹿児島県)がともに3エリアを占めており、関東の3エリアはすべて東京都のベッドタウンとして繫栄してきたエリアである。また、九州エリアでは、佐賀県と熊本県は福岡県に隣接している。

 

このように大都市に隣接する5エリアに、地方大都市を有する愛知県と宮城県の2エリアを加えた7エリアについては、「男女ともに大きな労働市場が比較的身近にあり、住まい(地価)と仕事のバランスも悪くはなさそうである」というところが出生数の減少率が低めとなっている原因と推測される。 

※10エリア中7エリアについて、令和3年度の公示地価の都道府県ランキング※を参照すると、巨大労働市場を持つ東京都が1平米あたり113万円であるのに対して、神奈川県は26万円、埼玉県は16万円、千葉県は13万円となる。同様に九州最大の労働市場を持つ福岡県は18万円であるが、熊本県は10万円、佐賀県は4万円となる。愛知県は21万円、宮城県は14万円である。※https://tochidai.info/public-price_prefecture-ranking/
以上から予想されるワークライフバランスのよさを大前提として、交通手段の利便性等を加えた結果と思われる。

【若い独身女性の動きに正直な出生数の変化】

この「男女ともに大きな労働市場が比較的身近にあり、住まい(地価)と仕事のバランスも悪くはなさそうである」という視点からみると、減少率が4割以下の水準にとどまった福岡県、滋賀県も同様である。

 

滋賀県は「滋賀府民」という言葉が使われるほど、大阪府、京都府への通勤者が多く、ベッドタウンとしての歴史を持つ。

 

意外に思われるのは、東京都より出生率が高い大阪府ならびにそのベッドタウンの近畿エリア(和歌山県、京都府、兵庫県)の出生数の減少幅が東京都以上に大きいことではないだろうか。

 

これは若い女性の人口移動が関係しており、就職先として「大阪か、東京か」という選択の中では、大阪は常に東京都に対して社会減(転出超過)エリアとなってきた歴史が影響している。

 

いくら域内での出生率をあげても、1組のカップルが授かる赤ちゃんの数には限界があり、人口再生産能力を持つ女性の母数をエリア外に奪われてしまうと、出生数では勝ち目はない。

 

若い独身期の女性の移動に注目すると、各エリアの出生数の謎を簡単に説明することができる。

 

本稿では半世紀での出生数の減少割合の実情のみのレポートにとどめるが、上記のような視点から各都道府県においては「少子化対策」を今一度、見直されることを呼びかけたい。

 

 

天野 馨南子

ニッセイ基礎研究所

 

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本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

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