厚生労働省の人口動態統計(令和2年)によると、日本人のもっとも多い死因は「がん」で、その割合は約4人に1人です。また「最期は自宅で過ごしたい」と願いつつも、痛みなどに不安を抱え、実現できないまま亡くなる人が多いのが現状です。そこで、がんの痛みを抑える治療や副作用の注意点について、医療法人あい友会理事長の野末睦氏に解説いただきました。

医療用オピオイドの効果、分類、持続力を解説

詳しいことは医師、薬剤師などの医療関係者が知っていればよいと思いますが、患者さんやその家族が、ぜひ知っておいてもらいたい医療用オピオイドのふたつの分類があります。

 

まず作用時間に基づく分類です。薬を飲んだり、貼ったりしたあとゆっくりと効いてきて、そのあとしばらく効果が持続するものです。

 

1日に2度服用する。つまり12時間ごとに服用するといいものだとか、1日に1度だけ貼り替えればいいものだとかあります。これらは、持続痛をターゲットとして用いられます。投与量を調整することで、持続痛を0/10から1/10にもっていくのです。

 

そして、持続痛が抑えられても、1日に数回、急な痛みが襲ってくることがあります。

 

つまり突出痛です。この痛みに対しては、効果がすぐ出現するタイプの薬を使います。これらの薬剤は「レスキュー」と呼ばれています。

 

急な痛みを「救う」という意味ですね。これらの薬剤は服用してから、早いもので5分。時間がかかっても15分くらいで、効果を発揮します。その代わり、効果がなくなるのも速いのですが。

 

このゆっくり効くタイプと、レスキューとをうまく組み合わせて使うことによって、1日を痛みなく過ごす事ができるようになります。

 

もうひとつの薬の分類で重要なものは、投与経路の違いです。お薬は、口から飲んで服用する経口薬、肛門から入れる座薬、体の表面に貼る貼付(ちょうふ)薬、また舌の下で溶かして服用する舌下薬に分けられます。

痛みのコントロール…治療による副作用の可能性は?

また、痛みをコントロールするため、皮下に持続的に液体の医療用オピオイドを注入することもしばしば行われます。

 

がんで病状が進行してくると、しばしば経口薬の服用ができなくなる事が起こります。ですから、在宅医は、経口薬をできるだけ早く、貼付薬に置き換えていくことができないだろうかと、常に心に留めています。

 

また、きめ細かな投与量の調整などは皮下注でのコントロールが容易なので、行動制限が出てきてはしまいますが、持続皮下注をおすすめすることもあります。

 

このように、最近は本当に色々な手段で投与することができて、患者さんはもちろん、我々在宅医療提供者も安心して痛みのコントロールに取り組むことができます。

 

そしてオピオイドの副作用としては、便秘が代表的ですが、精神的な錯乱に陥ったり、まして他人を傷つけてしまうような精神状態に陥ってしまうことはありません。むしろ痛みがなくなるために、精神的に落ち着いて、食欲が増したりすることすらあります。

 

医療用オピオイドを在宅の場でも使いやすい時代になってきていますので、痛みのことはあまり心配せずに、在宅医療を選択されるといいと思います。

 

 

野末 睦

医療法人 あい友会

理事長

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