(※写真はイメージです/PIXTA)

世界中で人気が爆発した動画アプリ「TikTok」は中国企業で、IT業界の新星。米中対立のなかで「TikTok」はマイクロソフトをはじめとする米企業による買収計画が報じられましたが、そのゆくえは混沌としています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国側の対抗措置で、事態はさらに複雑に

TikTokに話を戻すと、まず中印間の国境対立を反映させた形で、2020年6月29日にインド政府が中国発のアプリ(Bytedance社のTiktokやTencent社のWechatなど)の使用停止という対抗措置を発表しました。その後、2020年7月から施行された香港の国家安全維持法に基づく将来の利用者情報共有などから手を引くためか、またはグローバル市場でのブランド守るためか、同年7月にTikTok自身も香港からの撤退を発表しました。

 

そして米国も様々な米中対立の流れから、Bytedance社が2017年に買収したmusical.ly社に関して、CFIUS議長でもあるムニューシン財務長官から、「1億人の利用者の個人情報が中国に流出する懸念がある」と米事業の切り離しをトランプ大統領に勧告し、Bytedance社が中国のインターネット安全法/国家情報法で、当局へあらゆる協力が求められ、「ティックトックの米事業も北京からデータベースにアクセスできる以上、常に個人情報が抜き取られるリスクがある」という理由の元、2020年8月6日にトランプ大統領が同社に対して、同年9月15日までに米国事業の売却命令を出しました。

 

その後同年8月14日にトランプ大統領が正式な売却命令を法律に基づき発令、一応90日以内の売却となっていますが、当初の予定通り9月15日までに米企業などに売却しないのであれば、取引禁止とする、とトランプ大統領が発言したそうです。

 

一部報道によると、米国のVC(セコイアやジェネラルアトランティック等)、マイクロソフトやウォールマートがTikTok の買収検討、また米政府とも協議といわれていました。売却する方からすると、TikTokというアプリ(1つのプロダクト)としての生き残りを考え、また中国外の市場サイズを考えると、国際版のTikTok(6500万人ユーザーの成長市場である米国)を他のオーナーに保有を通じてより羽ばたいてもらう、という絵は描きやすい話かなと思いました。

 

しかし一方で同年8月28日に、中国の商務省と科学技術省が発表した「中国輸出禁止・輸出制限技術リスト」のリストを2008年以来初めて改訂し、輸出制限の対象に人工知能(AI)や個人向けのデータ解析などを加え、TikTokの資産を対象とし、Bytedance社のTikTokの米国事業売却に中国政府の許可が必要となりました。

 

その後も、ByteDance社が米政府を提訴や、以前目論んでいた、米国のIPO上場を諦め、上海・香港での上場を目指す、などの話もあり、そして日本も自民党のルール形成戦略議員連盟が似たような規制の必要性を議論している、と言われています。本件に関して、ファーウエイと同じように、様々な動向が見られるかと思います。

 

後藤 康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

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