(※写真はイメージです/PIXTA)

財務分析は、経営者が自社の現状と問題点を把握し、今後の経営戦略を立てるのに役立てることができます。財務分析のポイントと、資本効率の挙げ方を解説していきます。※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

資本効率の向上には「因数分解」して取り組む

近年では、株式公開企業に求められるコーポレートガバナンスコードなどで、資本効率などの指標が、経営目標として求められるようになってきています。資本効率とは、投下した資本に対してどれだけ利益を上げたかということで、具体的にはROAやROE、ROICなどの指標で表現します。

 

図表2のような表をデュポンチャートと呼びますが、ROEを因数分解して表現しています。米国のデュポン社がこのような因数分解を始めたところからその名が付いています。

 

デュポンチャートは、実際に自社の財務値を当てはめてみるとよく分ります。

 

ROE自己資本当期利益率は、税引き後当期利益÷自己資本ですが、分解すると、総資本当期利益率と自己資本比率の逆数(分子と分母を逆さにしたもの)の掛け算になります。

 

さらに遡ると、総資本経常利益率(ROA)や総資本回転率になって行きますし、もっと遡ると売上高営業利益率や売上高粗利率にまでなっていきます。

 

伝統的に日本の経営者は損益計算書重視で、バランスシートのことはあまり頭にありませんでした。会社の社内で立てる予算も損益計算書中心で、利益計画が主になっています。

 

ただ、もともとの理屈から言うと、会社は株主からお金を出してもらって、そのお金を使って事業で利益を出しているわけですが、元手に対する見返りがどの程度なのかは重要といえば重要なのです。そうした考え方を資本効率といいます。

 

自己資本や総資本は、貸借対照表(バランスシート)の項目なので、これらを分母にし、利益を分子にすると、先ほど述べた資本効率ということになります。

 

株主利益を重視する米国ではROEが二桁台の企業が多いのですが、日本の企業は伝統的にROEが一桁台の企業が多くなっています。それでも近年は外個人株主比率が高まったこともあり、中期経営計画等でROEを経営指標に入れる企業が増えています。

 

ROEを上げるために分子の税引後利益を増やそうとする活動はいいのですが、目標を達成するために逆に分母を減らす方の活動に走ると、あまり好ましくない傾向といえます。自社株買いを行うと、会計上は株主資本を減らすことになるので、ROEの分母が下がり、結果としてROEが上がることになります。

 

ROEやROA等の資本効率をよくするには、分子である利益を増やすだけでなく、使用する資産をなるべくスリムにして、分母が極端に膨らまないようにする必要があります。

 

この他、類似の指標にROIC(投下資本利益率)等もあります。

 

[図表2]

 

ポイント

資本効率の向上には、因数分解して取り組む

 

井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表

 

 

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