(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業の「生産性」は、諸外国に比べて低い状況が続いています。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」によると、日本の2019年の一人あたりの労働生産性はOECD加盟37ヵ国中26位と、1970年以降最悪の順位であり、主要先進7ヵ国に限定すれば、1970年以降は常に最下位。なぜ、日本の生産性は向上しないのでしょうか? そもそも生産性とは何かという問題から1つずつ見ていきましょう。

「能力」「時間」による生産性向上は図られてきたが…

パフォーマンスを基準に、人材を分類すると、ハイパフォーマー・アベレージパフォーマー・ローパフォーマーの3種類に分類できます。生産性が高い人は「ハイ」、普通の人は「アベレージ」、低い人が「ロー」といった具合です。

 

「能力」が高く、メンタル面も良好で「パフォーマンス」が高い状態に維持されていれば、その人はハイパフォーマーです。

 

一方、単純に「能力」が低い場合や、「能力」は申し分ないのになんらかの事情でそれを十分に発揮できない(パフォーマンスが低い)場合は、その人の生産性は低くなるためローパフォーマーに区分されます。

 

これまで、生産性を上げるためには「能力」を高めればよいということで、企業における能力開発がさかんに行われてきました。新人研修から始まり、毎年一定の時間を社員研修に振り分けている企業が大半です。

 

また、時間については言わずもがなで、近年でこそ働き方が見直されつつありますが、日本は長時間労働で生産性を高めようとしてきた歴史があります。

 

しかし一方で、パフォーマンスを向上させる研修はあまり行われませんでした。なかには幹部候補生を強制的に合宿させて、根性を鍛えるといった研修を受けさせる企業もありますが、少数派です。しかも、こうした研修ではあまり効果はありません。なぜなら、そういったケースの多くは、パフォーマンスに関するデータの分析なしに、精神論を押し付けているだけだからです。

パフォーマンスは「測定」も「開発」も困難

では、なぜパフォーマンス開発は行われてこなかったのでしょうか。それは、パフォーマンスを向上させようにも、そもそもパフォーマンスを測定する方法が分からなかったからです。

 

能力であれば、なんらかの測定ができます。例えばテストを実施すれば、その結果の点数によってその人の能力が分かります。点数が高い人は能力が高く、点数の低い人は能力が低いといったように、非常にシンプルです。また、点数が低い人であっても、研修会に参加したり、自主的な勉強を促したりすれば、それが能力の向上につながり、生産性を高めることができます。

 

時間についても、会社が従業員の労働時間を把握していれば済むことです。良い悪いはさておき、定時で帰る人に残業をお願いすれば生産性は高まります。

 

このように、能力や時間は比較的簡単に把握でき、生産性向上のための一手が打てます。

 

しかし、パフォーマンスについては、そう単純ではありません。パフォーマンスはそれぞれの人のメンタル面の状況などにも左右され、目に見えず、数値化もしにくい要素です。

 

加えて、知識や経験に基づく能力と違い、パフォーマンスは一時的に高まったり、落ち込んだりすることもあります。見るからにやる気に満ち溢れている人がいたとしても、明日同じような状態を維持できる保証はどこにもありません。

 

些細なことがきっかけで「今日は仕事に集中できない」といったことは、誰にも経験があるはずです。それが1日で終わればよいのですが、場合によっては長引くこともあり、そうなると慢性的にパフォーマンスが低い状態に陥ってしまいます。

 

また、従業員が慢性的にパフォーマンスの低い状態にあったとしても、管理者がそれを把握するのは容易ではありません。仮に把握できたとしても、改善させるのはもっと難しいはずです。さらに、たとえ表面上改善されたように見えたとしても、メンタル面の状況に影響されるがゆえに、本当のところは本人にも分からないことがあります。

次ページ数少ない「パフォーマンス開発」の手段もあるが…

※本連載は、梅本哲氏の著書『サイエンスドリブン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

梅本 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

勘や経験に頼った人事では生産性は上がらない! 長時間労働が見直され、社員の能力を上げようにもすぐに結果を出すのは難しい…。 そんな現代日本においては、個人の生産性を決定づける「パフォーマンス」を高めることが…

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