(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2021年10月19日に公開したレポートを転載したものです。

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ドル高時代、米国の役割は「需要創造者」に

世界の機関車、中国から米国へ

米国のテーパリングがいよいよ視野に入り、ドル高の時代が始まったのではないか。ドルインデックスは5月末以降5%上昇している[図表1]。

 

[図表1]ドルインデックス推移
[図表1]ドルインデックス推移

 

時代が変わっている。コロナ危機に対して米国が世界にドルを供給し、結果としてドル安になった時期は終わった。これからはドルが強くなり、世界の資金が米国に集まり、米国内需つまり米国への輸出が各国経済を推進する時代に入っていくのではないか。

 

2022年これまで世界経済をけん引してきた中国経済の大減速が必至となった。IMFの直近10月に改訂発表した2022年の世界の経済見通しは、中国前年比+5.6%、米国同+5.2%であるが、恒大集団危機が引き金を引く建設・不動産の失速により、中国の景気落ち込みは更に大きくなるかもしれない。他方、米国消費は旺盛、世界経済の機関車は中国から米国にシフトしつつある。

 

ドルは米国の秘密兵器、米中対決でドル高は必須に

ドル高要因が山積している。

 

まず、1.米国の超金融緩和が終わるのに伴い、米国の実質金利の上昇が見込まれる。

 

また、2.インフレ抑制にドル高が有利であること、原油価格とドルは強くリンクしてきたこと(第二次オイルショック時はドル急騰で原油高を相殺)。

 

3.米国のポリシーミックスの変化(金融引き締め財政拡大の方向にシフト…顕著ではないが)もドル高要因である。

 

更に最も重要なことは、ドルが米国の秘密兵器であることかもしれない。

 

ドルは時として米国の地政学的目的達成のために使われてきた。かつて対日、今後は米中対立の戦略手段としてドルが利用されるだろう。

 

米国の喫緊の優先課題、中国排除のグローバルサプライチェーン構築にとってドル高は必須であると考えられる。コロナ時の一時的ドル安が終わり、2011年をボトムに始まった長期ドル高トレンドが続いていくことになる、と想定される[図表2]。

 

[図表2]ドルの実質実効レート推移
[図表2]ドルの実質実効レート推移

 

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