(※写真はイメージです/PIXTA)

防災について、マンションの管理組合には、居住者を守るために万全の備えをしておくという役割が課せられています。管理組合が取り組むべき防災対策にはどのようなものがあるのか、ポイントを解説します。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

ほとんどの管理組合が加入している保険は

そのために万一、事故、事件が発生しても、トラブルの処理に困らないようにその損害をカバーできるのが「マンション共用部分火災保険」です。この保険はほとんどの管理組合が加入しています。

 

標準管理規約第24条(損害保険)では、「区分所有者は、共用部分などに関し、管理組合が火災保険その他の損害保険の締結することを承認する」と明記されています。

 

また、実際に火災が発生した場合において、管理組合として復旧等の手続きを迅速かつ円滑に進めることができるように、同状の規約に「理事長は前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。」ことも定めています。

 

実際にマンションにおいて火災に遭った共用部分の復旧、共用部分から漏水事故による損害賠償を行う場合には管理組合の財産から支出しなければならないので、合意形成が困難になり迅速な対応が難しくなります。

 

このようなことから、国土交通省の「マンション管理標準指針」では管理組合が適切な火災保険その他の損害保険に付保していることが「標準的な対応」としています。

 

その保険契約の内容についても、組合員はマンションに安心、安全、快適に住むことを踏まえて「この保険の付保内容で大丈夫なのか」を常にチェックする必要があります。

 

損害保険契約の締結は、総会決議事項になっています。総会議案書には、保険料、保険の種類、どんな事故及び損害の時に保険金が請求できるか等の確認が必要です。

 

損害保険契約を締結する議案を上程する場合には、総会の会場に、保険募集にあたり保険商品に関する重要事項を正確に説明できる知識があると証明する「損害保険募集人」の資格を持っている保険代理店の担当者が同席されることで円滑に議案説明や質疑、応答ができると考えます。

 

最近、築年数の経過したマンションでは、マンション設備のうち、給・排水管の更新工事費が高額であり修繕積立金不足から実施されていない等、適切なメンテナンスが行われていないマンションでは漏水事故が多発しています。

 

そのために、築年数の経過したマンションの保険料は大幅な値上がり傾向にあります。共用部分の保険料の支出は、管理組合の支出の中では、管理委託費に次ぐ高額な支出です。

 

共用部火災保険加入を検討するときには、付保する内容をよく理解して必要ない補償は付保せずに、必要な補償を手厚くすることや、複数の損害保険会社から相見積もり取ることで保険料を節約することができます。近時、保険料が一年払いより割安になる、5年一括払いにしているマンションは多くあります。

 

最近、我が国も訴訟社会となり、マンション内のトラブルを訴訟によって解決しようとする傾向がマンションでも多くなりました。管理組合運営を巡って管理組合の理事や監事の役員が組合員から訴訟を受けるケースが多くなってそれが起因して理事会役員のなり手不足と考える管理組合もあります。

 

マンション管理組合またはその役員管理規約に規定する業務に係る行為に起因して、損害賠償請求を受けたことによって負担する法律上の損害賠償金、弁護士費用、法律相談費用、初期解決費用等の損害や情報漏洩対応費用等を補償する特約を付保できるマンション共用部損害保険も発売されています。

 

そのような「マンション管理組合役員賠償責任補償特約」を付保することを検討することも必要です。

 

 

松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表

 

 

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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