(※画像はイメージです/PIXTA)

ドクターショッピングは、患者にとって、より良い治療選択を探る点でメリットがあります。一方、スイッチングによる治療の中断、検査のやり直しによるコスト面の負担などのデメリットもあります。医療経営の視点に立つと、患者が定着しない問題を引き起こします。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

患者のドクターショッピング解決策は

(4)ドクターショッピング行動の解決策

 

患者のドクターショッピング行動の解決策は、継続受診行動を向上させることであり、その成果は、患者が定着し、①国が推進するかかりつけ医機能の向上、②医療費のコスト削減、③患者満足の向上、④患者の重症化を予防することにつながる。その結果、社会的コストが軽減され、医療経営を安定化させ、患者の不利益を解消することが可能となる。

 

(5)セカンドオピニオンとの違い

 

治療中に他医師・医療機関を受診する点で類似する行動として、セカンドオピニオン(主治医以外の医師による助言)が挙げられる。セカンドオピニオンは制度である。その目的は、患者がほかの医師に助言を求めて、受ける医療の判断材料にすることであり、主治医から受けた診断や治療について妥当性を確認するために行う。2006 年の診療報酬改定では、セカンドオピニオンを目的とした診療情報の提供に係る評価として「診療情報提供料(Ⅱ)」が新設された(厚生労働省,2008)。

 

セカンドオピニオンを求める場合は、まず主治医に事前に相談し、これまでの検査結果などの情報をすべて持って別の医師であるセカンドドクターに相談に行くことになる(プレジデントオンライン,2010)(図1)。セカンドオピニオン外来への受診の場合、元の通院先の医師は、診療情報提供書を作成し、過去の検査等データをセカンドドクターに提出する。患者はそのデータを持参し、セカンドドクターはそのデータをみて意見を述べる。

 

出所:プレジデントオンライン(2010)、厚生労働省(2008)を参考に筆者作成。
【図2】ドクターショッピング行動とセカンドオピニオンの違い 出所:プレジデントオンライン(2010)、厚生労働省(2008)を参考に筆者作成。

 

基本的にこの段階で、診療行為は行わない。厚生労働省の調査では、多くの医師が問診と持参画像(資料)、場合により触診を行い、意見を述べていることが報告されている。また、セカンドオピニオン外来は、保険適用外で自由診療扱いのため、費用は患者の全額自己負担になる(厚生労働省,2008)。

 

仮にその後、転院を希望する場合でも、セカンドオピニオン制度においては、一旦、元の担当医の外来を受診する必要があり、転院は病病・病診連携により行われる。したがって、セカンドオピニオンでは、重複診療、重複検査、重複投薬は行われない。

 

一方、ドクターショッピング行動は、過去の診察の情報は何も持たずに自己都合により受診先をスイッチ、もしくは重複受診する行為である。そのため、スイッチ先では最初から問診を受け同じ検査をやり直す可能性が高く、重複検査や診療、投薬が発生し、結果として無駄や患者の不利益が発生する。

 

以上により、セカンドオピニオンは、ドクターショッピングとは異なる行為である。ただし、厚生労働省の調査では、セカンドオピニオン外来の課題について、患者は、主治医・かかりつけ医への気兼ねのため、セカンドオピニオンを希望しにくいケースが多いことが報告されている(厚生労働省,2008)。

 

 

杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

 

 

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