(※画像はイメージです/PIXTA)

ドクターショッピングは、患者にとって、より良い治療選択を探る点でメリットがあります。一方、スイッチングによる治療の中断、検査のやり直しによるコスト面の負担などのデメリットもあります。医療経営の視点に立つと、患者が定着しない問題を引き起こします。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

ドクターショッピングはデメリットが多い

(2)ドクターショッピング行動のメリット

 

ドクターショッピング行動は、患者にとりメリットももたらす。例えば、患者により医療提供者が選択されるため、患者と医師とのより良い関係を促進することが可能となる。結果として患者は満足や信頼を高め、服薬順守や治療への協力に影響を与えることが指摘されている(Andylim et al., 2018)。仮に担当医師に問題があり、より良い医療の提供がなされず対応も適切ではなく、信頼関係が築けない場合は、患者自身が不利益から身を守るために医師(医療機関)を変えることは必要である。

 

(3)ドクターショッピング行動のデメリット

 

ドクターショッピング行動は、多くのデメリットを抱えており、【社会的問題】、【経営的問題】、【患者の不利益】などの問題を引き起こしている。(図1)

 

●社会的問題

 

ドクターショッピング行動は、重複検査や治療によるコストの増加、薬の重複投与や廃棄の無駄による医療費の増加を招いている。厚生労働省(2018)、経済同友会(2015)をはじめ、Andylim et al.(2018)は、ドクターショッピング行動による重複検査や治療、投薬による無駄が原因で医療費に影響を与えていることを問題視しており、社会的な課題となっている。

 

厚生労働省医政局の『医療資源の有効活用に向けた取組の推進』に関する資料では、重複受診・重複検査等の状況について、重複受診率は全体で2~3%程度であり、診療所間の重複受診は2.15%、病院・診療所間では3.37%であることを報告している。これは、健康保険組合連合会による調査研究を基に作成している(厚生労働省医政局・医薬食品局・保険局,2014)。

 

この調査は、ドクターショッピング行動が医療費にどの程度影響を与えているのかに関するものではなく、あくまでも重複診療・投薬の調査である。しかしながら、重複診療や重複投薬の大きな課題を示す。

 

厚生労働省は、2019 年9 月に2018 年度の医療費の総額が概算で42 兆6,000 億円に達したことを発表した。前年度から約3,000 億円増加し、2 年連続で過去最高を更新している(厚生労働省保険局調査課,2019)。例えば、極端な話になるが、この医療費42.6 兆円のうち3%が重複受診・重複検査だとした場合、計算では1 兆2,780 億円が重複による無駄な支出だと考えられる。なお、ドクターショッピング行動に関する実態調査は見当たらない。

 

●経営的問題

 

ドクターショッピング行動は、業務の非効率化や患者の受診中止による通院の離脱を招き、その結果、医療機関が経営不振に陥ることが指摘されている(Andylim et al., 2018)。

 

●患者の不利益

 

ドクターショッピング行動は、患者に大きな不利益を与える。他院にスイッチすることで繰り返し行われる検査や治療の無駄、重複検査・治療による経済的負担、複数治療と重複投薬による副作用、診断治療の遅延・中断による病状の悪化、病気の早期発見の遅れ、そして時間の無駄が挙げられる(Andylim et al., 2018)。

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患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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