キャリアコンサルティングとしての豊富な実務経験を持つ中山てつや氏は、著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』のなかで、古き日本の職場における諸問題について語っています。
「結婚すると、給料が増える」という現実を見て…職場の理不尽 (※写真はイメージです/PIXTA)

【関連記事】高学歴でも「仕事ができない社員」に共通する、意外な口癖

いまだ日本に根強く残っている「年功序列」制度

世の中には、いろいろな種類の人事制度が存在します。また、時代の変遷と共に変化し、進化しています。著者が社会人デビューした頃は、「年功序列型」の人事制度が当たり前の世界でした。

 

仕組みは単純明快で、在籍年数に応じて給料が増え、役職も上がるようになるので、必然的に、「偉いさん」と呼ばれる役職者は、年配の方で占められていて、我々も、滅私奉公すればあの地位にまでたどり着けるという、「暗黙の了解」がありました。

 

古き良き時代といえばそれまでですが、不思議な事態に遭遇することもありました。入社4年目だったと思いますが、同期数名と、給与明細を見せ合ったことがあります。当時の会社では、入社して3年間は、基本給に差がつかない仕組みでしたので、どれくらいの差がつくのか、興味本位で「えい、やー!」でやってみたのです。すると、確かに差のついている同期もいました。

 

しかし、差額は実に微妙で、あっても数百円程度でした。「なーんだ、そんなもんなんだ」当時の率直な感想でした。

 

同時に、もっと驚くべき事実を知ります。同期のひとりは、すでに結婚していました。その妻帯者の支給額が、他の同期と比べて飛び抜けて多いのです。中身をよく見ると、「家族手当」という名目の手当てが支給されています。しかも、その金額が、基本給の差に比べると、桁違いに多かったので驚きました。「結婚すると、給料が増える」という現実を知った瞬間でした。

 

この出来事から、会社から支給される給料が、必ずしも仕事や実績と連動しないことを学びました。若くして結婚すると、年功賃金では暮らせないとの配慮からなのでしょうか。

 

かくいう著者も、結婚してからは、その恩恵にあずかることになります。余談ですが、収入が「多い少ない」に関しては、その頃は、まだどちらかというと無頓着でした。

 

それよりも、とにかく早く仕事を覚えて、与えられた目標を達成することで、一人前として認められることのほうが、重要な関心事でした。きっと、昇格して「偉く」なれば、給料も自動的に増えていくと信じていたのでしょう。

モチベーションアップに繋がる「表彰制度」だが…

更にもうひとつ、会社の「表彰制度」が影響していたように思います。この会社には、営業成績を達成した担当者を、定期的に表彰する制度がありました。

 

しかも、表彰状は個人名で、営業責任者より直接手渡されるので、担当者によっては、強烈なモチベーションに結びつくことになります。

 

ほめられたり、表彰されたりすると、金銭を受け取った場合と同じ脳の部位が反応することを、かなり経ってから知りました。たかが「紙っぺら1枚」で、あたかも「大金」を手にした気分になるわけです。

 

結果的に、「会社の思うつぼ」でしたが、その頃身に着けたノウハウで、その後のキャリアを構築できたことを思うと、当時の職場には心より感謝しなければなりません。