(※画像はイメージです/PIXTA)

家族のことを、従業員のことを、お客様のことを、取引先のことを、地域の人たちのことを大切に思わない人はきっといないでしょう。しかし、大切にできない人はたくさんいるに違いありません。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

優しさは次の新たな優しさを育んでいた

そんな姿を見兼ねた藪本は「もし、ここで断ってしまったら、どこへ行っても茶こしを手に入れられないだろう……。ご婦人の希望を叶えてあげられるのは、きっと僕しかいない」と、分厚いカタログを片っ端から開き、メーカーに問い合わせ続けました。

 

2時間ほどかけてようやく見つけ出すと、ご婦人はにっこりと喜んで帰られました。

 

「たった一人のために、たった数百円のために、なんて非効率なんだ!」と思うかもしれません。正直なところ、僕自身がずっとそう考えていました。

 

しかし、たった一人のために、たった数百円のために、これほどまで親身になれるのは誇るべきことだったのです。非効率なほどに親身にしてもらった経験は、お客様にある種の感動を与えているに違いありません。

 

藪本が不在時、僕が代わって要件をうかがおうとしたら、「藪本さんがいらっしゃる日に、あらためてうかがいます」と、お断りされたことが何度もあります。個人的には寂しいものの、お客様との間にある信頼関係を誇りに思い、嬉しさが込み上げてくるのです。

 

また、藪本は一緒に働く仲間たちに向けても優秀さを発揮していました。

 

誰かが重たい荷物を運んでいれば、頼まれなくても手伝います。汚れている場所は率先して掃除をします。困った人がいたら、自然に声をかけて助けます。

 

そんな藪本の姿を見て、ほかの従業員たちも優しさを発揮してくれます。優しさは次の新たな優しさを育んでいたのです。

 

「仏の藪本」という愛称で呼ばれる彼は、今では飯田屋の名物店員として知られ、世界中からお客様がひっきりなしに彼を訪ねてきます。「藪本さんからじゃないと買いたくない」と、おっしゃるファンが何人もいらっしゃいます。

 

彼は、人を大切にできる優しさに秀でた、とても優秀な「人財」だったのです。

 

■大切なことを大切にする

 

大久保さんの勉強会では、さまざまな講師がお話しくださいました。その中でも特に印象に残っているのが、株式会社はちどりの代表、石原慧子さんの「大切な人が大切にしていることを大切にする」というお考えです。

 

その話を聞いたとき、雷に打たれたような強い衝撃を受けたことをおぼえています。

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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