サービスの良し悪しが判断できない利用者・介護者
しかし、案内はほどほどに済ませ、「私に任せておけば大丈夫」といった感じで、ケアプランの作成に始まる一連の業務をどんどん進めていってしまうケアマネがいるというのです。
介護が始まるときの利用者・介護者は不安でいっぱいです。そんなとき、自信たっぷりに「私に任せて」といってくれるケアマネは頼もしい存在に見えます。そして、そのケアプランや始まったサービスが利用者・介護者に合致し、満足のいくものであれば、それこそ良いケアマネです。
しかし、残念なことに、そうならないこともあるのです。利用者・介護者を素人と見なし、ろくに話も聞かずに進めてしまうということは、相手のニーズや事情をしっかりとくみ取っていないわけで、ケアプランが的外れなものになっていることが多いのです。
「このタイプには、過去の成功体験を信じこんでいる人が多いですね。キャリアを積んでいくうちに、つくったケアプランと提供したサービスがズバリとはまり、利用者さんの状態が改善、家族の大満足で感謝されるという体験をすることがある。で、そのときのケアプランを最良と信じこみ、どの利用者さんにもそれを基準にプランを組むわけです。
でも、利用者さんの心身の状態も家族の事情もさまざまであり、そのプランが合うとは限らないんです。そういうスタイルで仕事をしているケアマネも、良かれと思ってやっているんだと思う。良いケアをしたいという思いがあって、成功事例に当てはめるわけですから。
でも、利用者・介護者の話をよく聞いてフレキシブルに対応するのが大原則。自分が良いと思っているパターンにはめるやり方は、問題があるといわざるをえません」
もっと残念なのは、こういうタイプのケアマネに当たっても、利用者・介護者サイドが、その良し悪しを判断できないことです。介護をスタートするときの自信ありげな言動に接していれば、任せるしかないと思いますし、受けているサービスが合っているのか、効果が出ているのかもわからない。「こんなものか」と、そのケアをつづけることになるわけです。
また、受けているサービスに疑問を感じたとしても、利用者・介護者サイドは、それをケアマネにいっていいものか、どこまで要求していいのかが、わからないものです。
もちろん良いケアマネはコミュニケーション能力に長けていますし、声を受け入れる姿勢ももっていますから、利用者や介護者の要望を会話のなかから察し、ケアに反映します。ところが、なかには聞く耳をもたないケアマネもいるそうです。
「ある介護者から聞いたのですが、ケアマネに『いま受けているサービスは必要性を感じない』といったところ、突然怒り出し、テーブルをバンバン叩たたきながら『必要なんです!』と断言したそうです。『素人が私の仕事に口出しするんじゃないわよ』という感じで怖かったといっていました」
介護者はこの一件をケアマネが所属する事業所に伝え、担当を替えてもらったそうですが、こういうケアマネもいるのです。介護が始まるとき、利用者や介護者の不安を軽くするためにケアマネが「任せてください」というのはありでしょう。しかし、話をしっかり聞かず、独善的に突っ走る姿勢を感じたら要注意ということです。
相沢 光一
フリーライター