※画像はイメージです/PIXTA

第100代総理大臣となった自民党の岸田文雄総裁は、衆議院の解散・総選挙について10月19日に公示、31日に投開票の日程を決めました。もしかすると、景気対策として「期間限定の消費税減税」を掲げる政党が出てくるかもしれず、また、それなりの支持を集めるかもしれません。しかし実際には、人々が期待するような効果は上がりにくいと考えられるのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

期間限定の消費減税は、無用な景気変動を引き起こす

過去の消費増税のときには、増税前に駆け込み需要があり、増税後に反動減がありました。それを考えれば、減税前に買い控えが起こり、減税後に反動増が起きることは容易に想像できるでしょう。

 

つまり「景気対策として2年間だけ消費税率を引き下げる」ということは、直ちに買い控えと反動増が発生し、2年後に今度は駆け込み需要と反動減が発生する、ということになるわけです。短期間のあいだに4回も無用な景気変動を引き起こすのは愚策としかいいようがありません。

 

消費税を廃止するというのなら、2回の無用な変動が起きても、長期的に世の中をよくするためのコストとして我慢しましょう。しかし、一時的な消費減税は、長期的に世の中をよくする効果が見込めないのですから、これは避けるべきでしょう。

 

たとえば、所得税や住民税等々の減税であれば、無用な駆け込み需要や買い控えは起きないので、そのほうがはるかにマシですし、上記のように観光業の従業員などに集中的に金を配るほうが、さらにいいと思います。

「ビルトイン・スタビライザー効果」をもたない消費税

以下は余談として、筆者が消費税を好まない理由を記しておきます。それは、景気の「ビルトイン・スタビライザー効果」を持たないからです。ビルトイン・スタビライザー効果というのは、直訳すれば「組み込まれた自動安定化装置」というわけですが、景気がよくなると税収が増えて景気過熱を防ぎ、景気が悪化すると税収が減って景気の落ち込みを緩和する効果のことを言います。

 

所得税は累進課税ですから、所得が増えると税率が上がります。したがって、所得が1割増えると支払う所得税が2割増える、といったことが起きるわけです。景気がよくなって残業が増えると、所得が増えて大幅増税になるので、景気の過熱が防げる一方で、景気が悪化して残業代が減ると大幅減税となって景気の落ち込みを和らげてくれるわけですね。

 

法人税にも同様の効果があるはずです。累進課税ではありませんが、こちらも、景気がよくなれば企業の利益は大幅に増え、景気が悪くなると企業の利益は大幅に減ることになるからです。

 

それとくらべると、消費税は景気がよくても少ししか増えず、景気が悪くても少ししか減りませんから、景気の自動安定化装置として働かないわけですね。

 

ちなみに、財務省のホームページには、消費税は税収が安定しているからいい税だ、と書いてありますが、それは財務省にとっていいのであって、日本経済にとっていいわけではない、というのが筆者の反論です(笑)。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

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