結婚相手の連れ子と、自動的に親子になることはない
厚生労働省の調べによると、離婚は年間25万組、年間50万人が離婚を経験していることとなります。離婚しても、その後独身でいるとは限りませんから、結婚する方のなかには、再婚の方も増えています。同様に、厚生労働省の調べによると、年間72万組のカップルが結婚しているようですが、そのうち、男性の13万5000人が再婚で、女性は12万人が再婚のようです。
Xさんのように、前妻とのあいだに子どもがいなかったというケースでは、再婚してもあまり問題はありません。
しかし、Pさんのように前夫とのあいだに子どもがいる場合は、相続にどのように関係してくるのか、財産はどのように相続されていくのか、知っておいたほうがいいと思います。
まず、Xさんが連れ子QさんのいるPさんと結婚した場合、Qさんは、Xさんの相続人となるのでしょうか。
XさんがQさんの親であるPさんと結婚しても、Qさんは、当然には、Xさんの子どもにはなりません。法律上、再婚相手の連れ子は、婚姻とは別に「養子縁組」をしないと親子にはならないのです。
したがって、Pさんと再婚したら自動的にPさんの連れ子であるQさんはXさんの子どもになるとした選択肢①は誤りです。
いくら遺言書に記しても、結局は連れ子に財産が…
そこで、Xさんのように「血が繋がっていない子どもには遺産を相続させたくない」ということであれば、自分と血が繋がっていない子どもQさんと養子縁組をしなければよいということとなります。
とすると、正解は、選択肢②であるように思えます。
しかし、XさんはPさんと再婚する以上、PさんとのあいだにXさんの子どもが生まれても生まれなくても、Pさんは配偶者として常に相続人となります。
したがって、XさんがPさんより早く亡くなれば、Xさんの遺産はPさんに相続されることとなり、Pさんが相続したXさんの遺産は、Pさんが亡くなれば、Pさんの子どもであるQさんに相続されます。
Xさんがどうしても他人の子どもであるQさんには相続させたくないと思って、妹であるY子さんに全部の遺産を遺贈するという遺言を書いたらどうでしょうか。
遺産は、Y子さんにすべて取得されることとなります。しかし、配偶者であるPさんは、Xさんの唯一の相続人で、法定相続分が100%ですから、遺留分が2分の1となります。
そうすると、Xさんの配偶者であるPさんがY子さんに遺留分を行使すると、Y子さんは遺産の2分の1に相当する金額をPさんに支払わなければなりません。
したがって、Xさんは自分の財産をすべてY子さんに相続させることはできないのです。
そして、Pさんが取得した遺産は、Xさんからすると他人の子であるQさんに相続されることとなってしまいます。
したがって、今回の問題の正解は選択肢③となります。
もしも、どうしてもY子さんを通じても、Aさんから相続した遺産を他人の子どもであるQさんに相続させたくないということであれば、その方法はあります。Aさんの遺産分割でXさんがAさんの遺産を全く取得せず、すべてY子さんに相続させてしまうという方法です。
しかし、それではXさんはAさんの遺産を取得できないということとなり、本末転倒となってしまうのではないでしょうか。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
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