(※画像はイメージです/PIXTA)

ドクターショッピングは、患者にとって、より良い治療選択を探る点でメリットがあります。一方、スイッチングによる治療の中断、検査のやり直しによるコスト面の負担などのデメリットもあります。医療経営の視点に立つと、患者が定着しない問題を引き起こします。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

ドクターショッピングのメリットとデメリット

ドクターショッピング行動は、患者にとり一部ではメリットをもたらす(Andylim et al., 2018)。しかしながら、社会的問題や経営的問題、患者の不利益などのデメリットは大きく、医療機関と患者に大きな損失をもたらす。この損失を回避するためには、ドクターショッピング行動の理解が不可欠である。

 

厚生労働省は、病院の規模に応じた役割を持たせることを目的とし、医療の機能分化に関する医療政策を実施している。それに伴い、地域住民の日常的な医療管理を担う、かかりつけ医制度を推進している。この医療機能の分化とは、医療の機能に見合った資源の効果的かつ効率的な配置を促し、急性期から回復期、慢性期まで、患者が各々の状態に見合った病床で、状態にふさわしい、より良質な医療サービスを受けられる体制をつくることを示している。

 

日本医師会による「医療提供体制のあり方」に関する四病院団体協議会合同提言によると、かかりつけ医とは、なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う、総合的な能力を有する医師であることと定義している。そして、かかりつけ医は、患者の最も身近で頼りになる医師として、自ら積極的にその機能を果たしていく必要があることを示している。

 

かかりつけ医機能については、

 

・第1に、かかりつけ医は、日常行う診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療および保健指導を行い、自己性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。

 

・第2に、かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。

 

・第3に、かかりつけ医は、日常行う診療の他に、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに、保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。

 

・第4に、患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。

 

以上の4点が示されている。かかりつけ医制度は、医療機関の医師だけではなく、保険調剤薬局の薬剤師も、かかりつけ薬剤師として適用されており、地域の住民の健康を守るため、制度化が進んでいる。

 

 

杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

 

 

 

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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