(※写真はイメージです/PIXTA)

慢性腎臓病(CKD)が悪化すると、透析治療が始まります。悪化を防ぐには病院での早期治療だけでなく、ご自身での対策も必要です。「腎不全」の予防について、南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説します。

セカンドオピニオン「全部食べて大丈夫です」の真意

過去に、こんなケースがありました。ある女性の患者さんで、クレアチニンの値は1.23mg/dLと、少し悪い程度なのですが、ある病院で栄養指導を受けたところ、「カリウムを摂らないように」と厳しく言われ、ほかの栄養素についても、あれもだめ、これもだめ、と制限されてしまったそう。「先生、何を食べたらいいんですか」と、涙目で訴えてこられました。

 

診察した私の答えは「全部食べてください」。その方は体型も細身でたくさん食べるとは思えない人でした。ですから量だけ気をつけて、少しずつ摂るようにすれば、食べてはいけないものはありません。どの栄養素も全部摂ってください、と申し上げたのです。

 

「でも先生、カリウムの値が心配で……」

 

「大丈夫です。それで万一、カリウムの値が高くなれば、減らす薬がありますから。あなたの場合はそれで十分に対処できます」

 

その患者さんは一転、安堵の表情を浮かべ、定期的に検査を受けて数値をきちんと見ていくことを約束し、お帰りになりました。

 

大きな医療機関では、医師が栄養士に慢性腎不全の食事指導をしてくださいと“丸投げ”して、栄養士も教科書どおりのことしか指導しないことも残念ながらあるようです。「何も食べられない」と患者さんに思わせてしまっては、精神的に大変なダメージとなりますし、身体的にもやせ細ってしまうリスクがあり、それでは適切な指導とはいえないでしょう。

 

もちろん、厳しい制限が不可避なケースもあり得ますが、早期のうちに見つけ治療を開始すれば、最初からあれもこれもだめなどと、厳しい指導にはならないはずです。画一的でない、一人ひとりの病状を考慮した指導が望まれます。

 

CKDを悪化させないために必要なことは栄養面だけではありません。具体的に列挙すると、次のようになります。

 

①高血圧と糖尿病患者:血圧と血糖値のwコントロール

 

②肥満症:体重コントロール

 

③生活習慣病の防止:脂質・尿酸値のコントロール

 

④食事療法:減塩・過度のタンパク摂取などの指導

 

⑤電解質と水分コントロール

 

⑥尿毒症物質の除去:クレメジン内服

 

⑦腎性貧血のコントロール:ESA、HIF製剤投与

 

その他

 

タンパク尿(+)・Cre 1.3mg/dL以下など腎生検適応→連携病院

 

合併症の管理

 

このうち薬の投与や、数値を把握するための検査などは医療機関でなければできませんが、生活習慣病のコントロールやそのための食事療法は、患者さんが主体となり取り組むことになります。上記の一覧でいえば、①②③④⑤が該当します。これらが良好になれば⑥⑦⑧は回避できたり投薬量が少なくできたりします。

 

ただ、言葉でいうのは簡単ですが、実践するとなると、長年にわたる食生活を変えなければならず、抵抗感もあるものです。ぜひ、家族の理解とフォローも欲しいところです。

 

 

鈴木 孝子

南青山内科クリニック 院長 

※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生涯現役」をかなえる在宅透析

「生涯現役」をかなえる在宅透析

鈴木 孝子

幻冬舎メディアコンサルティング

わが国で透析といえば一般的に、医療機関に通って行う「施設血液透析」のことを指します。 実際に9割の患者がこの方法で治療を受けています。しかしこの方法は、人間らしい生活が奪われるといっても過言ではなく、導入直後は…

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