死の間際の夫を残して…妻が急いで向かった「まさかの場所」【在宅医が見た医療の現場】

死の間際の夫を残して…妻が急いで向かった「まさかの場所」【在宅医が見た医療の現場】
(※画像はイメージです/PIXTA)

自分の思いを伝え、実際に行動する……。「亡くなる側」「残される側」それぞれの思いとは。 ※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

 

亡くなった「あと」のことも考える

■自己満足でもいい

 

ご本人に「何を食べたい?」「どこに行きたい?」と聞いてみても、もしかしたら「もう十分だから大丈夫だよ」という返事しか返ってこないかもしれません。

 

でも、もし看取る側が「これを食べさせてあげたい」「ここに連れていってあげたい」と思うなら、あくまでご本人に無理のない範囲で、やる選択もよいと思っています。

 

自己満足かなと心配になるかもしれません。でも、その自己満足がおおいにその後のご家族を支えてくれることがあります。残されるほうにも、後悔しない選択が必要なのです。

 

■経済的なことも話し合っておけると安心

 

奥さまが亡くなったあと、ご主人は通帳の場所も暗証番号もわからなくて……というテレビでよく目にする光景は、本当にあります。

 

そうは言っても、じゃあ、ご家族のほうから「もうすぐ亡くなりそうだから教えて」と端的に訊けるかといえば、それもなかなかむずかしいもの。

 

とてもデリケートな部分ですし、もちろん状況によりけりですが、できることなら、ご本人が自覚的に残される側のことを考えて、話し合う余裕を持てると理想的です。最期を迎えるまでの準備期間に話し合える状況をつくるのです。

 

患者さんのなかには、「あとで大変になるだろうから、今日中にお金をおろしてきて」と自分からはっきり言うタイプの方もいらっしゃいます。「もう死期が迫っているというのに、奥さまがお留守なんてどうしたんだろう?」と思ったら、そう言われて急いで銀行に行っていた、ということもありました。

 

こうした実務の手続きは後回しになりがちですが、やはり残される側にとっては大きな問題になります。ですから、できるだけ早いうちに情報を残しておけると安心です。

 

のちのちもめ事になりそうな要因も、ご自分がまだ元気なうちに対策を立てておくべきだと思います。ご自分が亡くなったあと、年金や財産のことで家族がもめるのは何とも悲しいものです。

 

■残される人の人生も大切にする

 

療養生活でのさまざまな選択についても、ご本人が亡くなった後に家族のそれぞれの人生が続くことをどうか忘れないでいてください。仕事は辞めずにいてください。困ったときはまわりに相談してください。相談することが苦手な人も多いように思います。ついプライベートなことだから家族の病気や介護のことを周りに言うなんてはばかられると思う方もまだまだ多いでしょう。

 

でも相談をすることで、本当に目の前が開けることがあります。また自分が発信することで、誰かの助けになるかもしれません。介護なんて周りで誰も話してない、と思ったら、あなたがパイオニアになればいいのです。

 

 

中村 明澄
在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

 

 

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「在宅死」という選択~納得できる最期のために

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中村 明澄

大和書房

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