(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍でうつ病になってしまった41歳・会社員のAさん。初めに受診した精神科で思うような治療の効果が得られず、セカンドオピニオンを探して、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏のもとへやってきました。「Aさんのうつ」の根本的な原因として考えられることを、同氏が詳しく解説します。

「ADHD」である可能性も…

8つ目は、「Aさんが発達障害である可能性」です。

 

目下、Aさんの困りごとの一つとして夜になかなか寝つけないという訴えがありますが、それが実は発達障害の一つであるADHD(注意欠陥多動性障害)の特性から説明できる場合があります。

 

ADHDの方は、集中力が続かないため日中、ボーッとすることが多く、そのため、昼と夜のメリハリがつくれず、寝つきにくい、睡眠が浅い、長く寝ざるを得ないなど、睡眠に支障を来す場合があります。Aさんも実はそのような特性をもっていましたが、社会人以降、仕事が刺激となり日中に覚醒を保つことができ、夜は逆に気を失ったかのように寝ることができていた、ということが実情だったかもしれません。

 

そのAさんが、休職して自宅療養に入った途端、元の質の悪い睡眠に戻ってしまった、というストーリーがあり得るのです。

 

この観点に立つと、Aさんが職場に適応できなかった理由としても、ADHDの特性を考慮する必要が出てきます。段取りが苦手で計画的にできないため仕事を抱え込んでしまっていた、あるいは、不注意ミスを防ぐため同僚よりダブルチェックにエネルギーを使い疲弊していた、などの実情が浮き彫りになる可能性があります。

 

9つ目のボトルネックの可能性として挙げられるのは、「ゲームに対するネガティブイメージや罪悪感」です。

 

Aさんは、ゲームをしているときだけはそれを忘れてゲームに熱中できると言います。おそらく本人は家族の手前、後ろめたさを感じているでしょうが、「今、現在に注目する」という意味では、まさにマインドフルな瞬間です。

 

前医でカウンセリングを担当した臨床心理士はこの貴重な情報をスルーして、杓子定規にレーズンエクササイズから始めようとして不発に終わってしまいました。しかし本来は、このマイナス思考を忘れて目の前のゲームに集中できる瞬間を肯定し、活かしていくカウンセリングが、本来の対人援助の姿であるべきです。

 

 

※ 本記事で紹介されている事例は、個人が特定されないよう、実際の患者のケースを複数組み合わせています。

 

 

小椋 哲

医療法人瑞枝会クリニック 院長

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    ※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    小椋 哲

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