(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍でうつ病になってしまった41歳・会社員のAさん。初めに受診した精神科で思うような治療の効果が得られず、セカンドオピニオンを探して、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏のもとへやってきました。「Aさんのうつ」の根本的な原因として考えられることを、同氏が詳しく解説します。

「順風満帆」タイプにこそ見られるストレスのかたち

4つ目は、「両親による過干渉」です。

 

紹介状によると、Aさんの受診のきっかけは両親の勧め、カウンセリングを受けるようになったのも両親の働きかけがあったようです。いわゆるエリート家庭に育ち、本人も有名大学を出て大企業に勤めています。幼い頃から教育熱心だった親がいまだに過干渉を続けて、それが本人の負担になっているという可能性は十分あります。

 

5つ目の可能性として挙げられるのが、「夫婦関係の悪化」です。紹介状には特に、Aさんと妻との関係性については記載がありませんが、この点も可能性としては考えておく必要があります。

 

専業主婦にとっては、夫がうつ病で仕事を休んでいるだけでも心配と不安でいっぱいになるわけですが、その状態で1日中、夫婦で顔を突き合わせていると、互いのイライラが募っていることは容易に想像できます。自宅の療養環境を整えるうえでもパートナーの理解と協力は重要です。

 

6つ目の可能性は、「職場の上司によるパワハラ」です。

 

Aさんは春からの新しい職場での上司と折り合いが悪く、𠮟責を受けることも多かったようです。詳しいことはもう少し聞き取りをする必要がありますが、こうした状況があれば復職へのモチベーションを保つことができませんし、復職しても再発のリスクが高くなります。

 

心のどこかに、復職をしたあとの上司との関係性に懸念があれば、うつ病が治っていくことは、「またあの地獄に戻るのか」という恐怖を引き起こします。その意味では回復することがAさんにとってはデメリットになり得るのです。それを無自覚にでも感じていると、回復が実際に滞ります。

 

こうした場合は、Aさんの異動、あるいは上司への指導や異動といった措置を講ずることが、ボトルネックの解消につながります。Aさんはただでさえ、職場に対する罪悪感にさいなまれているため、こうした申し出を職場にするのを躊躇する可能性は高いですが、Aさんの認識を粘り強く修正し、職場に対してアクションを起こす必要があります。

 

7つ目は、「患者本人がうつ病を否認していたり、うつ病の診断にショックを受けている」ということです。

 

精神科に通う患者のなかには、自分の診断に納得できていなかったり、精神疾患と診断されたこと自体に大きなショックを受けている人が一定数います。特にAさんのように、一見してこれまで順風満帆の人生を歩んできたように見えるタイプには、こうしたケースがよく見られます。

 

こうなるとあらゆる療養が噛み合わず、何をやっても効果がないということになりかねません。精神疾患からの回復には、患者本人が自らの疾患を理解して受け入れ、療養に意欲をもって取り組むことがとても重要です。

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    ※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    医師を疲弊させない!精神医療革命

    医師を疲弊させない!精神医療革命

    小椋 哲

    幻冬舎メディアコンサルティング

    現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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