(※写真はイメージです/PIXTA)

今、世界から注目を集めているのが、アリババが推進する新しい小売戦略「ニューリテール」だ。アマゾン、ウォルマートも真似るという「ニューリテール」とはいったい何か。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

実店舗の売上高は異例の増加が続いている

ジェット買収から3年間に、S&P500種株価指数が38%増だったのに対して、同社株価は53%増を記録した。

 

とはいえ、ウォルマートは、他の小売業者と同様に、EC事業の増収をテコに利益の黒字転換をめざしていた。2019年、報道によれば、EC事業部門は、210億ドルの売上高に対して10億ドルの損失を計上している。この事実は衝撃的かもしれないが、どういう状況なのか精査したい。

 

パンデミック前の時点で、アメリカのEC市場全体に占めるウォルマートのシェアは5%にも満たなかった。同社には4年前までまともなEC事業の影も形もなかったことを考えれば立派な業績であるが、アメリカのEC市場で50%近いシェアを押さえているアマゾンには遠く及ばない。

 

ただ、EC事業の場合、システムや配送インフラに巨額の固定費がかかるが、販売量を拡大することでこの負担を軽減していけるかどうかにかかっている。だとすれば、売り上げの拡大に伴って収益性もある程度までついてくると考えるのが筋だ。今まさにそういう段階なのかもしれない。

 

2020年第1四半期には、オンライン事業の売上高が前年同期比74%増という驚異的な数字を叩き出した。同社のEC事業の通年業績見通しでは、売上高が44%増の410億ドルで、eベイを抜いてアマゾンに次ぐ第2位に浮上する見込みとなった。

 

パンデミックの全期間を通じて、ウォルマートが「生活維持に必要不可欠」の小売業者に指定されてからは、実店舗の売上高も異例の増加となり、2020年第1四半期は10%の成長となった。

 

5年前まで苦境に立たされていたウォルマートが、驚異的な進化の新たな段階に突入していたのである。

 

 

ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント

 

 

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