(※画像はイメージです/PIXTA)

年収の多い医師は、離婚の際に多額の財産分与に関する問題を抱えることがある。溝上医師(仮名・65歳)も、妻の咲子(仮名)の不貞行為により離婚話が進み始めたものの、財産分与の件で争いが続いた。さらに、医療法人制度による思わぬ弊害も受けていた。弁護士の渡邊泰範氏が携わった医師の離婚問題から、医療法人制度の弊害について紹介してもらう。

怪文書により妻の不貞行為が発覚!

溝上医師の場合も、平成19年3月31日以前に設立した社団医療法人であり、相続により溝上医師が100パーセントの持分を有していました。もっとも、持分の多少にかかわらず、溝上医師、妻の咲子、子ども2人は、いずれも1人1個の議決権を有していることになります。それまで,溝上医師と咲子の夫婦仲は,表面上は問題なく,病院経営も順調でした。社員総会で揉めることもありませんでした。

 

ところが、溝上医師が60歳を超えた頃、突如、思い掛けない事件が起きたのです。いつものように出勤すると、溝上医師宛てに、咲子の不貞行為を告げる差出人不明の怪文書が届きました。寝耳に水の出来事でした。

 

溝上医師は、咲子に不貞行為の事実を問い質しましたが、不貞行為を否定しています。しかし、不審に思った溝上医師が調査をしたところ、咲子の不貞行為の決定的な証拠を掴んだのです。

離婚調停では解決できず離婚訴訟へ

溝上医師は、妻の咲子に対し、不貞行為の証拠を突き付けました。ところが、咲子は反省するどころか、溝上医師に対し、かえって長年積み重なった不満をぶちまけました。一方、溝上医師も、日頃から口うるさい咲子に対して長年不満を募らせていたこともあり、売り言葉に買い言葉で激しい口論となりました。

 

その後、夫婦仲はすっかりと冷え込んでしまいました。溝上医師は離婚を決意し、咲子に切り出しました。しかしながら、離婚後の生活を心配した咲子は離婚を拒みました。やむなく溝上医師は離婚調停を申立てましたが、離婚調停では解決できず、離婚訴訟となりました。

慰謝料請求額は10数億円に!

溝上医師は離婚訴訟で、不貞行為の決定的な証拠を突き付けましたが、咲子は頑として非を認めようとはしませんでした。それどころか、離婚をして欲しければ、慰謝料として溝上医師の全財産をよこせと要求する有様です。咲子の要求は、病院をも売却し、売却益の全てをよこせというものであり、その総額は10数億円という法外なものでした。

 

溝上医師からすると、不貞行為を働いた咲子がその非を認めないことを許せないのは当然であり、先祖から受け継いだ大事な病院を売却して、全てを譲り渡すことなどできるはずがありません。離婚訴訟でも、和解できませんでした。

 

幸いなことに、裁判所は、咲子の不貞行為を認めて、離婚を認める判決を言渡しました。溝上医師は、無事に咲子と離婚することができたのです。ところが、溝上医師は困ったことに気付きました。元妻となった咲子が、社団医療法人の社員の地位を有していたからです。

 

ここでいう社員とは、いわゆる従業員のことではありません。株式会社で例えるなら、株主に相当する、社団医療法人の構成員のことです。

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