2018年に金融庁主導で始まった「つみたてNISA(積立NISA)」。非課税期間終了の20年後にいくら増えているかのシミュレーションや、元本割れ、暴落していたときの対処法などを、証券会社出身のSGO編集者が解説します。
つみたてNISA(積立NISA)…20年後に暴落していたときの賢い対処法 (※写真はイメージです/PIXTA)

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個人の資産形成を後押しするために、金融庁主導で始まった「つみたてNISA」。

 

2018年からスタートした比較的新しい制度なので、投資可能期間の20年後についてイメージしている人は少ないのではないでしょうか? 

 

そこで本記事では、

 

「つみたてNISAなら20年後にいくら貯まるのか?」

「20年後に元本割れしていたら?」

「20年後に暴落していたらどうすればいいの?」

 

などの疑問や不安について解説していきます。最後まで読めば、つみたてNISAの20年後の出口戦略がわかり、慌てて売却して後悔することがなくなります。

 

ぜひ最後までお読みください。

 

1. つみたてNISA(積立NISA)とは

積立nisaとは
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

つみたてNISAは、2018年から始まった、少額による「長期・積立・分散投資」を支援するための非課税制度です。

 

毎年40万円までの積立投資が可能で、最大20年間、合計800万円までの投資で得た利益と、投資信託から出る分配金(株式の配当金のようなもの)が非課税になります。

 

購入できる商品は、金融庁の基準を満たした248本の投資信託とETFに限定されています。

 

販売手数が無料(ノーロード)であったり、信託報酬(投資信託の手数料のこと)が一定の基準以下であったりと、低コストの商品ばかりです(具体的な商品は金融庁のサイトを参照)。

 

用意されている商品は、日経平均などの株価指数に連動するように設計された手数料が安い「インデックスファンド」がほとんどです。

 

そのため、つみたてNISAを利用すれば、投資初心者でも最小限の手間とコストで資産運用を始められます。

 

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2. つみたてNISAで運用すると20年後にいくらになるかをシミュレーション

つみたてNISAのことがなんとなくわかっても、20年後にいくらになるかをイメージできないと、なかなか始める気にならないですよね。

 

そこで、毎月の積立額を1万円、2万円、3.3万円とし、利回り3%、5%、7%で運用できた場合の20年後の積立総額をシミュレーションしたのが次の表です。

 

積立nisaを20年間運用したときのシミュレーション
つみたてNISAを20年間運用したときのシミュレーション金融庁のシミュレーションツールでSGO編集部が作成
※小数点第1位を四捨五入

 

つみたてNISAは、商品選びを間違えなえれば、3~5%の利回りをあげることは十分可能な制度です。

 

そこで、毎月の掛金のほぼ上限である月3.3万円を積み立てて3%で運用できれば、元本792万円が20年後には1,356万円に増え、これで「老後2,000万円問題」の半分以上は解決できることになります。

 

しかも、本来なら運用益564万円に対して約20%の税金113万円がかかりますが、つみたてNISAなら税金はかかりません。113万円もあれば、海外旅行にも行けますね。

 

ただし、上記のシミュレーションは、つみたてNISAでの運用を20年間続けて複利で運用した場合の金額です。

 

次の金融庁の資料でも示されているように、つみたてNISAをはじめとした積立投資は、10年や20年といった長期で運用することで収益率が高く安定するとされています。

 

国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布
(出所:金融庁つみたてNISAについて平成29年7月)

 

5年間などの短期間だと、積立金額もまだ少ないうえ、左側の棒グラフのように収益にバラつきがあって元本割れをすることもあります。

 

そのため、つみたてNISAは10年以上、できれば非課税期間いっぱいの20年は保有するつもりで毎月の積立額を決めることをおすすめします。

 

3. つみたてNISAの非課税期間20年が終わったときのポイント4つ

積立NISAの非課税期間が終わったときのポイント
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

それでは、つみたてNISAの非課税期間20年が終了したら、つみたてNISA勘定で積み立てた投資信託はどうなるのでしょうか?

 

まずは次の4つのポイントを押さえましょう。

 

■つみたてNISAの20年後について知っておくべきこと

  1. 非課税期間終了の時期はいっぺんには来ない
  2. 20年後の株価が「新たな取得価格」になる
  3. 20年後の価格が購入時より上昇していた場合、新しい取得価格からの値上がり分に課税される
  4. 20年後の価格が購入時より下落していた場合、本来払う税金より多く課税されることもある

 

それぞれ解説します。

 

① 非課税期間終了の時期はいっぺんには来ない

つみたてNISAの非課税終了の時期はいっぺんには来ません。つみたてNISAの非課税期間は、次の図のように1年ずつズレていくのが特徴です。

 

積立nisaの非課税期間の仕組み
(出所:金融庁「つみたてNISAの概要」

 

たとえば、2018年に40万円積み立てた分は、2037年までが非課税期間になります。また、2019年に積み立てた分は、2038年までが非課税期間になります。

 

つまり、つみたてNISAを始めた年に積み立てた分から非課税期間終了の時期が順次訪れるということです。

 

つみたてNISAを始めた年から20年経過した時点で勝手にすべて売却されるわけではありません。そのため、非課税期間終了前に無理して自分で売却する必要はありません。

 

ちなみに、2022年から積立投資可能期間が5年間延長され、非課税になるのは、2042年に積み立てた分が最後となります。

 

② 20年後の株価が「新たな取得価格」になる

つみたてNISAはいつでも売却可能で、必ずしも20年間保有する必要はありません。

 

しかし、保有した状態で20年経過して非課税期間が終了すると、通常の課税口座(特定口座や一般口座)に自動的に移行し、時価で「払い出し」されます。そして、20年後の株価が新たな取得価格になります。

 

のちほどわかりやすく解説するので、ここでは、つみたてNISAは一般NISAのようにロールオーバー(翌年の非課税枠に移すこと)ができず、20年経過したら課税口座に移行されることだけを覚えておいてください。

 

③ 20年後の価格が購入時より上昇していた場合、新しい取得価格からの値上がり分に課税される

つみたてNISAの20年間の非課税期間終了時、購入価格より上昇していた場合について考えてみましょう。次のイメージ図をご覧ください。

 

非課税期間終了時に購入価格より上昇していた場合
非課税期間終了時に購入価格より上昇していた場合 (作成:SGO編集部)

 

購入価格が40万円で、20年後に60万円に上昇していた場合、「60万円が新しい取得価格」になって課税口座に移行します。

 

その後、70万円に上昇した時点で売却すれば、利益の10万円(売却価格70万円-新しい取得価格60万円)に約20%が課税されます。

 

本来の取得価格は40万円でしたが、つみたてNISA口座で買っていたお陰で、利益20万円(新しい取得価格60万円-本来の購入価格40万円)が非課税になります。

 

④ 20年後の価格が購入時より下落していた場合、本来払う税金より多く課税されることもある

今度は、つみたてNISAの20年間の非課税期間終了時、購入価格より下落していた場合について考えてみましょう。次のイメージ図をご覧ください。

 

非課税期間終了時に購入価格より下落していた場合
非課税期間終了時に購入価格より下落していた場合 (作成:SGO編集部)

 

購入価格が40万円で、20年後に30万円に下落していた場合、「30万円が新しい取得価格」になって課税口座に移行します。

 

その後、50万円に回復した時点で売却すれば、利益の20万円(売却価格50万円-新しい取得価格30万円)に約20%が課税されます。

 

本来の購入価格は40万円だったので、最初から通常の課税口座で取引をしていれば、利益の10万円(売却価格50万円-本来の購入価格40万円)に約20%が課税されるはずでした。

 

しかし、20年後に取得価格が下がったことで、上記のように、本来払うはずだった税金より多く課税される現象が生じます。

 

つみたてNISAの制度上、このような矛盾が生じることは仕方のないことなので、頭の片隅に置いておいてください。

 

4. つみたてNISAを始めて「20年後」に暴落して元本割れした場合の対処法4つ

積立nisaを始めて20年後に暴落したときの対処法
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

それでは、先ほどの非課税期間終了時の4つのポイントを踏まえて、20年後に株式相場が暴落していたときの対処法を考えてみましょう。

 

選択肢としては、次の4つが考えられます。

 

■つみたてNISAで20年後に暴落していたときの対処法4つ

  1. 慌てて売却せず「しばらく放置」
  2. 一部を「定率で」売却する
  3. すべて売却する
  4. いったん売却して、夫婦どちらかが再度つみたてNISAを始める

 

それぞれ解説します。

 

4.1. 慌てて売却せず「しばらく放置」

結論から言うと、つみたてNISAを始めて20年後に暴落したときは、「しばらく放置」が最も賢い方法です。

 

なぜなら、つみたてNISAの非課税期間終了の時期は、いっぺんには来ないからです。暴落時に非課税期間が終了するのは、20年前に積み立てた1年分だけ。つまり、暴落が積立資産全体に与える影響は20分の1です。

 

そのため、生活費に余裕があれば、そのまま課税口座に移行して相場が回復するのを待つ方法が賢明です。

 

最近の株式市場は1年に1回は暴落する傾向があり、「日経平均が1日で1,000円下落しました」「昨日のニューヨークダウは1,000ドル安となりました」というニュースは珍しくなくなりました。

 

このような急落したタイミングで慌てて売却してしまうと、せっかく積み立ててきた資産を安い価格で手放してしまうことになります。

 

通常の個別株投資では「損切り(ロスカット)は早く」と言われていますが、つみたてNISAは1社だけに投資しているわけではないので、価格が1円になる心配はありません。

 

また、リーマン・ショック(2008年)やコロナショック(2020年)のような株価暴落が起こって世界経済が不況に陥っても、中央銀行(FRBや日本銀行など)が何かしらの株価対策を行うので、5年もしくはそれより早く回復する可能性は高いです。

 

そのため、不安になって売却せず、相場が回復するまで我慢して保有し続けましょう。

 

4.2. 一部を「定率」で売却する

一部を「定率」で売却する
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、生活費に余裕がなかったり、暴落して資産が減ることのストレスに耐えられなかったりする人もいるでしょう。

 

その場合は、一気に売却せず、一部を「定率」で売却して積立資産を取り崩すことをおすすめします。

 

なぜ「定額」ではなく「定率」なのかと言うと、積立資産を長持ちさせるためです。

 

たとえば、20年間で元本800万円が1,000万円に増えたタイミングで暴落が起こり、積立資産が900万円に減ったとします。このとき、「定額で毎年50万円取り崩す」と決めていれば、残りは850万円になります。

 

しかし、「定率で毎年5%取り崩す」と決めておけば、資産が900万円に減って5%の45万円分を売却しても、残りは855万になります。そして、翌年に1,100万円に回復したときに売却するのは、5%の55万円分です。

 

このように、定額ではなく定率で売却すると、

 

  • 相場が安いときは少額の引き出し
  • 相場が高いときは多めの引き出し

 

となり、積立資産をより長く運用することができます。

 

4.3. すべて売却する

あまり考えたくはないですが、不幸な出来事が重なり、生活が困窮して急に大きなお金が必要になったときは、たとえ暴落時でも全部売却して当面の生活資金を確保する必要があります。

 

4.4. いったん売却して、夫婦どちらかが再度つみたてNISAを始める

つみたてNISAは1人1口座しか作れません。一度売却してしまうと、つみたてNISAの残り枠(毎年40万円&20年間で800万円)は回復することはありません。

 

しかし、夫婦の場合は、夫のつみたてNISA口座の残り枠が少なくなっても、妻なら新たに口座を作れます。

 

生活に余裕が出始めたタイミングで妻に口座を作ってもらい、つみたてNISAをもう一度始めてコツコツ運用すれば、安いところで売却してしまった分の損失を取り戻せるチャンスもあります。

 

5. つみたてNISAのおすすめ証券会社ランキング

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

取扱い銘柄数やポイント還元率、サイトの使い勝手、口座数などの項目から総合的に判断した、当サイトの「つみたてNISAおすすめ証券会社ランキング」は次の通りです。

 

■つみたてNISA…おすすめ口座ランキング

順位 口座 取扱い
銘柄数
選べる
積立頻度
最低積立
投資額
積立投資ができる
クレジットカード
ポイント
還元率
つみたてNISAで
貯まるポイント
1位 SBI証券 205本 毎日・毎週・毎月※1 100円 三井住友カード 0.5%※2 Vポイント
2位 マネックス証券 169本 毎日・毎月 100円 マネックスカード 1.1% マネックスポイント
3位 楽天証券 194本 毎日・毎月※3 100円 楽天カード 1%※4 楽天ポイント
4位 LINE証券 9本 毎日・毎月 1,000円
5位 松井証券 190本 毎月 100円

6位 auカブコム証券 195本 毎月 100円 Pontaポイント
7位 SMBC日興証券 158本 毎月 1,000円 dカード※5 0.03% dポイント
8位 セゾン投信 2本 毎月 5,000円
9位 イオン銀行 20本 毎月 1,000円
10位 SBIネオトレード証券 1本 毎月 100円

※1 三井住友カードによるクレカ決済は「毎月」のみ
※2 一般カードの「三井住友カード(NL)」の場合
※3 楽天カードによるクレカ決済は「毎月」のみ
※4 1%還元は2022年8月買付分まで(それ以降は実質的0.2%還元)
※5 ダイレクトコースの「投信つみたてプラン」のみ

 

詳しくは、次の関連記事で解説しているので、参考にしてください。

 

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6.「つみたてNISAを始めて20年後に暴落したときの対処法」まとめ

積立nisa20年後暴落のまとめ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

本記事では、つみたてNISAを始めて20年後に暴落したときの対処法を中心にお伝えしました。最後に、ポイントを整理しておきましょう。

 

■この記事のポイント

  • つみたてNISAの非課税期間終了の時期はいっぺんには来ない
  • つみたてNISAは20年間保有すると収益を最大化できる可能性がある
  • つみたてNISAの積立額は、無理のない金額を設定して長く続ける
  • 暴落しても慌てて売却せず、株式相場が回復するまで様子見する
  • 少しずつ売却する場合は「定率」にする

 

つみたてNISAの仕組みをよく理解し、株式市場の特性を知っていれば、暴落時に慌てて売却して後悔することはなくなります。

 

この記事が、あなたの資産形成への不安を和らげて、つみたてNISAを始めるきっかけになれば幸いです。

 

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