(※画像はイメージです/PIXTA)

本人に病気のことを話すのは可哀想だという家族もいます。もちろん、なかには「何も知らないでぽっくり逝きたい」と言う患者もいますが、身内や家族のあいだで隠し事があると、のちのちの不和の原因になります。それはなぜでしょうか。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

患者と医療者はお互いに信頼しあえる関係が必要

■まずは相談してみる

 

何か気になったことや、困ったことがあったら、まずは相談することが大切です。家族でとても悩んでいたけれど、ちょっと相談してみたら意外にすぐ解決できることがあるかもしれません。在宅医療や在宅ケアに関わる専門職の経験と知恵をぜひ頼ってみてください。

 

相談することは、恥ずかしいことでもなんでもありません。パソコンを買い換えようと思ったとき、パソコンの詳しい友人に聞いてみるとあっという間にいろんなことが解決したりしませんか? それに近い気持ちでぜひ気軽に声をかけてください。こんなことを聞いてはいけないんじゃないかと心配せず、まずは相談してみてください。

 

■「患者と医療者」の前に「人と人」の関係

 

患者と医療者という関係であっても、お互いにやっぱり人と人。医師や看護師も医療者である前に人間です。できるかぎり、いい関係でいたいものです。

 

そのために大切なのがコミュニケーション。良好なコミュニケーションがとれていれば、居心地がよいだけでなく、気軽に相談もできますし、本音も語りやすいのではないでしょうか?

 

私たち在宅医療に関わる医師や看護師は、患者さんの住み慣れたご自宅にお邪魔させていただいて医療やケアを提供します。その方らしさのたくさんつまった空間で、その空気を感じながら、いろいろな思いを聞けたらと思っています。その思いは大切にしたいですし、できるかぎり寄り添っていきたいと思っています。

 

ですが、中には残念ながら「こっちはお金を払っているんだから」と言わんばかりの方もいます。医療は少なくとも7割が税金で賄われる公的で必要なサービスです。最期の過ごし方の希望をできるかぎり叶えることと、身勝手なわがままを聞くことは、似て非なるもの。あまり身勝手なコミュニケーションが続くと、私たちも人間ですからつらくもなりますし疲弊してしまいます。

 

ご本人とご家族の大切な時間を支えるチームの一員として、お互い信頼しあえる良い関係でいたいものです。

 

■話し合いができることが必須

 

最期の時間の過ごし方を「決める」のは、ご本人とご家族の役目ではありますが、それを叶えていくために欠かせないのは、思いをちゃんと受け止めてサポートしてくれる医療スタッフの存在です。思いを支える医師や看護師が「しっかり話を聞いて、話し合えること」「医療者側の価値観やルールを押しつけてこないこと」、この2つは必須条件だと思います。

 

心を開いて、話をしても、なかなか聞いてもらえない、医師や看護師が過ごし方を決めていってしまうと感じたら、そう感じたこと自体をまず伝えてみてください。それでも何も変わらないようであれば、二度とない大切な時間を後悔なく過ごすために、医師や看護師の交代を検討することも一つです。

 

 

中村 明澄
在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

 

 

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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